ビタミンとミネラルと栄養補助食品

ビタミンとミネラルと栄養補助食品
 専門家の間でも栄養補助食品の必要性については意見が大きく分かれています。錠剤やカプセルは全て不自然なものであり、必要な栄養素は全て食事からとるべきだと考える人達がいれば、一方には食事に加えてビタミン、ミネラル、その他の栄養補助食品をとらなければ理想的な健康や長寿は達成できないと考える人達もいます。
 必要な栄養素の大部分は錠剤からではなく食事からとるのが望ましいと思われますが、ある種の栄養補助食品にはそれなりの意義があるとも考えられます。もしその人に合った、新鮮でバラエティに富んだ食事ができるのなら、必要な栄養素は全て食事からとるべきだと思います。しかし、私たちが食べている食品の多くは、含まれている栄養素が最大限にいかされているような作られ方をしていないということもあります。アルコール・タバコ・カフェインなどの薬物をとっている人、強いストレスにさらされている人、病気の人には、食事だけでは補給できない栄養素が必要になっているかもしれません。事実、ある種の症状には栄養補助食品が自然療法に匹敵するほどの効果があることも確かです。

 

ビタミン
 からだが正常に機能するには微量のビタミンが必要です。ビタミンが不足すると、その欠乏症になります。代謝に果たす基本的な役割に加えて、ある種のビタミンを定期的にとると別の役割を果たすようになり、それが特定の症状の治療に役立つようです。
 まず最初に、ビタミン一般についての注意です。
 つい最近まで、水溶性ビタミンは大量摂取しても余剰ビタミンがすべて尿中に排泄され、まったく害はないと考えられていましたが一部のビタミンは大量に取りすぎると問題が起こることがわかりました。したがって、ビタミンは適量の服用が重要になるようです。多すぎても少なすぎても困ったことになるといったところでしょうか。
 ビタミンの錠剤や粉末は、とくに胃が空っぽの時に飲むと、吐き気、胸焼け、その他の消化器症状を起こすことがあります。必ず食後、食べたものが胃に残っているうちに飲むようにします。午前中に飲むと具合のよくない人は、午後から飲むようにします。
 天然のものにはビタミン以外の成分が残っていて、それがビタミンの効果を強化するということはあるかもしれませんが、それを除けば、天然ビタミンと合成ビタミンに大きな違いはありません。ブランドによって同じビタミンでも価格に大差がありますが、混ぜ物や添加物が非常に少ないものであれば、一番安いものを買うことです。高価で美しいパッケージのビタミン剤を購入して恩恵を受けるのは、あなたではなく製造メーカーと販売店です。

 

ビタミンは大きく二つに分類されます。
 1. 水溶性で、からだから排出されやすいもの(ビタミンB複合体、ビタミンC)
 2. 脂溶性で、からだに蓄積されるもの(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)

 

《ビタミンB群》
 ビタミンB群には代謝反応に必要な数多くの成分が含まれています。まあまあバランスのとれた食生活をしているかぎり欠乏することはありませんが、ストレス、薬物の使用、病気などの条件があるときは必要量が増えます。愛煙家、愛飲家、不規則な食事をしている人、夜勤が多い人、ハードスケジュールで旅行をする人、慢性病の人には有効でしょう。
◎ チアミン(ビタミンB1) この成分はアルコールによって破壊されやすく、愛飲家は特 に飲酒当日に摂取した方がよいでしょう。
◎ リボフラビン(ビタミンB2) B複合体の栄養補助食品を飲むと尿の色が鮮やかな黄色に変色しますが、あの原因となる黄色の色素。尿の変色は無害ですが、知らないと驚くことがあります。このビタミンを単独でとる理由は特にないでしょう。
◎ ナイアシン(ニコチン酸、ビタミンB3) 大量にとると、「ナイアシンフラッシュ 」と呼ばれる劇的な反応を生じます。全身の熱感、発赤、かゆみとムズムズ感といった反応が摂取後1時間弱続きます。ナイアシンフラッシュは、ナイアシンが動脈と動脈を支配する神経に作用して、皮膚の血管を拡張する結果として起こります。ナイアシン摂取は血液循環に障害のある人には有益なようですが、大量摂取は肝機能の混乱を招き中毒性肝炎を起こす恐れがあります。レイノー病の人、愛煙家で夜寝ていてこむらがえり起こしやすい人、手足が冷える人にはナイアシンの栄養補助食品をおすすめです。 ただし、妊娠中の女性、胃潰瘍、痛風、糖尿病、膀胱疾患、肝臓疾患、虚血性心疾患の人は、ナイアシンの大量摂取は避けること。
◎ ピリドキシン(ビタミンB6) ビタミンとしての作用のほかに、数々の興味深い作用があります。神経圧迫症状、月経前症候群、ある種の抑鬱症と関節炎の改善に役立ちます。ヒリドキシンはまた、免疫系の保護にも役立ちます。ただし大量摂取は末梢神経を損傷して進行性麻痺を引き起こすことがあるようです。
◎ シアノコバラミン(ビタミンB12) 一切の動物性食品を食べない徹底したベジタリアン(菜食主義者)に欠乏しがちなビタミン。多少でも乳製品、魚肉、獣肉を食べている人は欠乏の心配はないようです。
◎ パントテン酸とビオチンB群に属し、重要な代謝機能をつかさどりますが、それだけを単独に摂取する理由はないようです。

 

《ビタミンC (アスコルビン酸、アスコルベート)》
 新鮮な野菜や果物をたくさん食べていればビタミンCの補給は十分ですが、アンバランスな食事をしていると不足がちになります。また、中毒・感染症・慢性病の場合はビタミンCの必要量が増えます。定期的なビタミンCの摂取により、抗酸化作用・抗ガン作用・免疫保護作用を発揮します。ビタミンCは血中レベルを一定に保つために、一日に二ないし三回に分けて飲まなければなりません。
ビタミンCの摂取による害作用は腸の耐性限界に達すると、不快な鼓腸(腸内にガスがたまる)や下痢が起こり、それがビタミンCに対する腸の耐性限界であり、また、最近の研究では多くとりすぎると消化管や泌尿器の機能を阻害するようです。
 ビタミンCはあまり酸味が強すぎず、ナトリウムや糖分を含まないものがよいでしょう。カルシウムの不足もいっしょに補いたい人は値段は少々高くなりますがアスコルビン酸カルシウムを取るといいでしょう。
 ビタミンCはエイズからガンまで何にでも効く万能薬というわけではありませんが、その有益な効果が全て解明されているわけでもありません。

 

《ビタミンA》
 従来、暗視能力の維持と皮膚をはじめとする上皮組織の正常な発達に必要だとされてきたビタミンですが、最近ではその抗酸化作用と抗ガン作用が注目されるようになりました。しかし、脂溶性のため高濃度のビタミンAを含むアザラシや北極グマを常食にする人達と、栄養補助食品として大量にとりすぎる人達には、ビタミンA中毒が起こります。
 水溶性のビタミンA前駆物質であるベータカロチンは、からだが必要に応じて、前駆物質をビタミンAに変えてくれます。その上、抗ガン作用はベータカロチンのほうがビタミンAより強いことも立証されています。したがって、ビタミンAではなくベータカロチンの摂取をおすすめします。が、最近の研究でベータカロチンの単独摂取だけではそれを含む食品ほどの効果が期待できないことが分かってきました。ベータカロチンのサプリメントを買うときはリコペン(トマトなどの赤い色素に含まれるカロチノイド)などを含有する複合カロチン錠がよいでしょう。また、愛煙家は゛ベータカロチンの摂取によりガンの罹患率が高くなるとの研究報告もあるので注意が必要です。

 

《ビタミンD》
 「日光ビタミン」とも呼ばれ、ほんの少しでも皮膚が紫外線に当たれば、からだは皮膚にあるコレステロール誘導体からビタミンDを作ります。地下で生活をしている人や全く日に当たらない人以外は、特にビタミンDを多く含む食品(卵黄・バター・肝油など)をとっていなくても、栄養補助食品で補う必要はありません。慢性病の人、カルシウムの代謝障害がある人は補助の必要が生じますが、その場合は病院で検査を受け、必要性を確認し、医師の指示の下、摂取量を決めることが大切です。過剰摂取は中毒を起こします。健常者で多少でも日に当たっている人にはおすすめできません。

 

《ビタミンE》
 ビタミンEは、からだの保護に関しては頼りがいのあるビタミンです。いくつかある作用のひとつに、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防ぐという作用があります。LDLは酸化したときだけ動脈を損傷させます。またそのほかにも、乳腺症・月経前症候群・生理痛・生理過多など、さまざまな婦人病に効果があることもわかっています。ビタミンEを、確実に吸収するためには多少の油成分または脂肪を含んだ食事と一緒に摂取すべきです。皮膚に塗布すると手術やヤケドの傷痕を小さくする効果もあります(傷口がふさがってから塗る)。
 ビタミンEはそのほどんどが高脂肪の種子類に含まれているため、食事から十分に摂取することは難しいでしょう。摂取する場合は必ず天然ビタミンEを選ぶようにします。ラベルに「d」(dlではない)αトコフェロール記載があるものが天然ビタミンEです。

 

《ビタミンK》
 正常な血液凝集のために微量を必要とするビタミンで、多くの食品に含まれています。
病院以外で一般の人が使う理由は別にありません。

 

ミネラル
 からだが正常に働くためには、微量ですが多くの種類のミネラルが必要です。この微量栄養素をまんべんなくとるための確実な方法は、多種多様の新鮮な野菜を食べることです。野菜を食べられない人や食べたくない人は、毎日マルチミネラルの栄養補助食品をとるのもよいでしょう。
 ビタミンと同じように、特定のミネラルを欠乏症の予防に必要な量より多くとると、特定の症状の改善に役立つようです。ただし摂取量が重要で、少なすぎるのは問題ありませんが、多すぎるとよくないことがあります。
 それでは知っておくべきミネラルについて説明します。

 

《鉄》
 酸素を運搬し、血液を赤い色にしているヘモグロビンをつくるには、鉄が必要です。鉄はからだが余剰分を排出できない数少ないミネラルの一つです。特に男性はケガの出血以外に余分な鉄分を排出するルートがありません。月経中の女性、手術などでかなりの出血をしている人、鉄欠乏性貧血の診断を受け、医師から飲むようにいわれた人以外は、絶対に鉄剤を飲むべきではありません。鉄分の過剰摂取はからだに蓄積して中毒症状を起こすばかりか、心血管疾患や免疫を阻害してガンを招きやすくします。
 ※マルチビタミン兼マルチミネラル剤を飲んでる人は、医師の指示を受けている場合を除いて、鉄が入っていないことを確かめる必要があります。

 

《ナトリウム》
 大量に汗をかいて筋肉に力が入らず、頭がくらくらするような場合を除いて、ナトリウム剤を補う必要はまずありません。ナトリウムをとりすぎると、人によっては高血圧(その結果、心筋梗塞や脳出血のリスクを高める)や、むくみ(その結果、心臓や腎臓に負担をかける)が起こります。
 ※飲んでいる栄養補助食品にナトリウムが入っていない事を確かめます。

 

《カリウム》
 からだの中でナトリウムを補う働きをするカリウムは、新鮮で多様な果物や野菜をとっている人なら、じゅうぶんに摂取しています。カリウム不足の心配があるのは利尿剤を飲んでいる人だけです。

 

《カルシウム》
カルシウムは神経と筋肉の機能を調節し、丈夫な骨をつくるのに必要なミネラルです。このところ、骨粗鬆症との関連でカルシウムに話題が集まるようになりました。骨粗鬆症は、加齢とともに性ホルモンの分泌が不足し、カルシウムが失われて、骨がスカスカになる深刻な症状です。特に女性は閉経を期に急速に進行し、男性も80歳を過ぎるとなりますが男性の平均寿命が76歳だと言う点からも、やはり女性にとっての方が深刻な問題です。骨粗鬆症は、遺伝、運動不足、性ホルモンの低下、それに食生活が複合して起こるものであり、なってしまってからカルシウムを大量にとっても治るものではありません。
 カルシウムは若いうちから摂取すべきです。また、タンパク質をたくさん取っている人はカルシウムを補う目的で牛乳及び乳製品を取ることは逆効果になることもあります。と言うのも、乳製品にはタンパク質が多く、からだはタンパク質をたくさん摂取すると骨からカルシウムを奪い排泄してしまうという事実があるからです。また、乳脂肪はコレステロールが高く、心臓・動脈に負担をかけ、乳タンパクの成分であるカゼインは免疫系を刺激しアトピーやリウマチといった免疫疾患を誘発する可能性もあります。
乳製品を食べない人は、加熱した緑色野菜、ゴマ、ブロッコリー、豆腐、ヒジキなどの海草類などからカルシウムがとれます。食生活を検討してカルシウム不足が心配になった人は、市販のカルシウム剤で補えば良いでしょう。

 

《マグネシウム》
カリウムがナトリウムを補うように、マグネシウムは体内でカルシウムを補う作用をします。神経と筋肉の電気信号を適切に伝導するには、カルシウムとマグネシウムのバランスがとれている必要があるからです。カルシウム剤とマグネシウム剤は一緒にとるのが理想です。

 

《セレニウム》
セレニウムは抗酸化作用をもつ微量金属で、顕著な抗ガン作用もあります。しかし、セレニウムは摂取量が多いと毒性を発揮します。セレニウムには摂取量を守るということのほかに、もう一つ注意することがあります。それはビタミンCとセレニウムは互いの吸収を邪魔しあうためビタミンCを摂取してから30分以内にはセレニウムを飲まないようにするこです。

 

《亜鉛》
適量をとっていれば免疫の強化ができます。とりすぎると免疫を抑制してしまう恐れがあるので注意が必要です。動物性食品を避けた食生活を選ぶ人は、意識的に亜鉛をとる必要があります。野菜や果物にはあまり含まれていないからです。ベジタリアンにとって最良の亜鉛の供給源は豆類と全粒穀物です。

 

その他の栄養補助食品
《スピルリナとクロレラ》
両方とも淡水で栽培される原始的な植物(藻)を乾燥したもので、濃緑色の粉末か錠剤になっています。つい最近まで奇跡の栄養補助食品として派手に宣伝され、非常に高価なものでした。成分の大半はタンパク質でそれに多少のビタミンとミネラルが含まれています。効能は立証されていません。
スピルリナの原産地はメキシコシティ郊外のテクスココ湖ですが、そこはひどく汚染されています。スピルリナもクロレラも今ではきれいな池で栽培されていますが、いくら清潔であっても栄養補助食品としてそれらを飲む理由はわかりません。

 

《レシチン》
レシチンはあらゆる生物の細胞に見られる脂肪様物質です。食品業界では乳化剤として広く使われていますが、アテローム性動脈硬化症やアルツハイマー病の治療、記憶力増進のための栄養補助食品としても売られています。しかし、それらの効能は科学的に立証されたものではありません。レシチンは無害ですが、健康な人が、食品からの摂取量以上を外からとる必要があるようには思えません。

 

《オメガ3脂肪酸》
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)と同じく、魚油に含まれる成分で、血液を希釈する作用があり、心筋梗塞の予防に役立ちます。また、抗炎症作用もあり、自己免疫疾患や関節炎の人は試してみる価値があります。とはいえ、カプセル入りの魚油よりはやはり適量のサケやイワシを食べて摂取することの方が良いでしょう。それは、ほかの栄養素についても同じことがいえますが、魚油のカプセルだけで、魚を食べたときと同じ効果が期待できるかどうか、わからないからです。
 部分の集合は必ずしも全体とは等しくないということです。。