免疫を高める
免疫(めんえき)
感染症やガンになるような方向に働く、あらゆる自然・人口の作用から我々を守ってくれるのが免疫系である以上、それを最良の状態に保つ方法を知っておくべきでしょう。
免疫系を守る方法
免疫系(自然治癒力の構成要素の一つ)は私たちが外界と接するインターフェイス(接触面)です。免疫系が健康で正常に働いていれば細菌が付いても感染しないし、アレルゲンに接触してもアレルギー反応が起こらないし、発ガン物質を摂取してもガンになりません。健全な免疫系は健康維持の要なのです。免疫の異常は大きく二つに分けられます。ひとつはその活動低下であり、低下すると感染症やガンになりやすくなります。もうひとつは活動亢進であり、免疫が働き過ぎるとアレルギー(花粉症など)や自己免疫疾患(リュウマチなど)になりやすくなります。
ほとんどの人は免疫系とは何なのか、はっきりとしたイメージをもっていないでしょう。 免疫系が理解しにくいことにはいくつかの理由があります。まず第一に、免疫系がからだの機能単位として認められるようになってからまだ日が浅いということがあります。驚くべきことですが、現代医学の歴史をひもといてみても、医師たちは免疫系をつかさどる多くの器官に「機能なし」と言うレッテルを貼り、平気でそれらを摘出してきたというのが事実です。例えば、扁桃腺・アデノイド(咽頭扁桃)・虫垂(俗に言う盲腸)・胸腺・脾臓を無用の長物としていたのです。 第二に、免疫系を構成する器官が、全体像をイメージしやすいようにまとまっていないということがあげられます。また、その働きがあまりにも複雑だということもあります。
免疫系は扁桃・アデノイド・胸腺・全身に分布するリンパ節・骨髄・循環する白血球及び血管から出て組織やリンパ管に移動する他の免疫細胞・脾臓・虫垂・腸管にあるリンパ組織によって成り立っています。
免疫系の基本的な仕事は自己と非自己を見分け、からだにあってはならない異物を認識し、それを排除するような活動をすることです。例えば、病原菌やそれに侵された細胞を見つけだして殺すこと、ガン細胞を見つけだして殺すことなどの働きをしています。
からだにとって異物であるかどうかを決める際に、免疫系が特に目を光らせている指標はタンパク質の成分です。生体をつくっている分子のうち、タンパク質が最も特徴的・特異的だからです。また、免疫系には神経系と同じように学習能力があり、情報を分析し、記憶し、次の世代の細胞にそれを伝達するのです。
免疫系の組織は非常に活発で、情報処理に深く関与しているので細胞分裂のスピードが速く、さまざまなタイプのエネルギーやDNAを変異させるような刺激によって、簡単に傷ついてしまいます。「ガンにならない方法」でお勧めした注意はすべて、そのまま免疫系を守るための注意でもあります。それを守っていただきたく思います。
さらに加えて、免疫系を守るためのガイドラインをご紹介しましょう。
1.感染症を長引かせないようにしよう
免疫系が最も消耗する事態の一つは、長引く感染症です。原因不明の発熱、寝汗、リンパ節(腺)の腫れや痛みなどを放置してはいけません。それらは感染症が隠れていることの徴候です。
2.不用意に抗生物質を使わないようにしよう
免疫系が感染症を巧みに処理しているときは、その経験の蓄積によって、同じ病原菌に対してますます強く対抗するようになります。免疫能は戦いによって強化されるのです。ですから、感染症の最初の徴候ですぐに抗生物質に手を出すような人は、免疫系に試練の場を与えてたくましく成長させる機会を逃すことになります。
抗生物質は強力な薬物であり、その人の免疫系では細菌感染が阻止できないときなどどうしても必要なときにだけ使うべきです。抗生物質の安易な使用を控えるべき理由は他にもあります。一番怖いのは、細菌が新種の菌株を選択的に繁殖させてしまい、その抗生物質に抵抗するどころか、さらに毒性を強めてしまう恐れがあるということです。また、頻繁に使えば長期にわたって免疫力を弱めていくというのも事実です。普通の感染症なら、まず試みるべき温和な方法がたくさんあります(安静・断食・汗をかく・蒸気吸入・鼻洗浄・うがい・温浴など)。重戦車の出動は簡単な治療法に失敗してからで十分なのです。
3.免疫抑制剤(ステロイド)を使わないようにしよう
ステロイドはアレルギーや炎症を魔法のように消してしまいます。実はその魔法には免疫機能を直接的に抑制するという仕掛けがあります。この強力な薬剤を症状が非常に重篤な場合に使うにしろ、その場合でも短期使用、つまり二ないし三週間に止めるべきだと言われています。軽度または中程度の症状に対して、また何カ月も何年も連続してステロイドを使用するのは嘆かわしい限りです。
ステロイドは非常に毒性が強く、依存性も高くなりがちです。病気を治すのではなく、それを抑えつけ、自然に備わった治癒力が働くチャンスを奪ってしまいます。また、免疫力も弱めてしまうのです。
4.安易な輸血は避けよう
輸血または血液製剤の注射によって、まだ治療法のないウイルス性疾患(とくに肝炎)に感染する危険性があります。それらはまた、異種タンパクを大量に体内に入れることによって、免疫系にストレスを与えます。とは言うものの、緊急時に血液の補給なしで済ますわけにわいかないことは明らかです。せめて外科手術を受ける事があらかじめ分かっている場合は、前もって医師に相談して自分の血液を採っておいてもらい、それを使うように (自己血輸血) 依頼すべきでしょう。
5.からだにいい食事をしよう
特に注意すべき点は以下のとおりです。
◎ 不飽和脂肪酸を含む植物油(紅花油・ヒマワリ油・コーン油・大豆油など)、及びそれを使った食品を避けよう。
フリーラジカル(活性酸素)を形成する性質があり、免疫系の細胞にとって危険です。
◎ タンパク質の摂取を減らそう。
タンパク質の代謝産物は免疫系に負担を与える傾向があります。特にアレルギー体質(アトピー・花粉症など)や自己免疫体質(リウマチ・SLEなど)の人は注意を要します。低タンパク・高炭水化物食を中心に、果物・野菜・繊維質をたっぷりとる食生活は健康全般のためにも免疫系のためにも優れています。
◎ 動物性食品をたくさん食べないこと。
牛や豚の肉・鶏肉・乳製品には、飼育の過程で投与された抗生物質やステロイド剤が残留していることが多く、それらは摂取した人の免疫機能を弱めます。
◎ 牛乳および乳製品の摂取を最小限にしよう。
特にアレルギー体質や自己免疫体質の人は注意していただきたく、牛乳のタンパク質(カゼイン)は免疫系に負担を与えます。
6.抗酸化栄養補助食品をとろう。
以下に紹介するビタミンやミネラルは、ガンのリスクを低くすると同時に免疫機能を保護するのにも役立ちます。詳しくはサプリメントの項目ををご覧ください。
《ベータカロチン》
ベータカロチンは水溶性のビタミンA前駆体で、広範な抗酸化効果に加えて、特に肺ガンと子宮頸ガンの予防に効果があります。油溶性で毒性を発揮するまで体内に蓄積することが あるビタミンAそのものとは違って、ベータカロチンはきわめて安全です。
《ビタミンE》
抗酸化作用をもつ第二の栄養補助食品はビタミンEです。確実に吸収するためには多少の油成分または脂肪を含んだ食事と一緒に摂取すべきです。
《ビタミンC》
第三の抗酸化栄養補助食品であるビタミンCは強力で、そのために食品保存料としても使われています。ビタミンCは血中レベルを一定に保つために、一日に二ないし三回に分けて飲まなければなりません。
ビタミンCの摂取による害作用は腸の耐性限界に達すると、不快な鼓腸(腸内にガスがたまる)や下痢が起こり、それがビタミンCに対する腸の耐性限界であり、また、最近の研究では多くとりすぎると消化管や泌尿器の機能を阻害するようです。
ビタミンCはあまり酸味が強すぎず、ナトリウムや糖分を含まないものがよいでしょう。
《セレニウム》
セレニウムは抗酸化作用をもつ微量金属で顕著な抗ガン作用もあります。しかし、セレニウムは摂取量が多いと毒性を発揮します。セレニウムには摂取量を守るということのほかに、もう一つ注意することがあります。それはビタミンCとセレニウムは互いの吸収を邪魔しあ うためビタミンCを摂取してから30分以内にはセレニウムを飲まないようにするこです。
以上が代表的な抗酸化栄養補助食品の紹介です。始めたらそれを習慣化し、長く続けましょう。免疫系を強化し、老化を遅らせ、ガンの予防にも役立ちます。
7.免疫力を高める天然の薬について知っておきましょう。
《ニンニク》
ニンニクの薬用効果は実に多様で、治癒にかかわるからだのさまざまなシステムに望ましい影響をおよぼします。ニンニクの最も劇的な作用として、心臓血管系に対する効果が上げられます。ニンニクには血圧を下げ、血中のコレステロールや中性脂肪を低下させ、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈壁への血小板凝集を妨げます。
ニンニクにはそれとは別に、殺菌性・抗菌性があり、さらにガン細胞の成長をチェックするナチュラルキラー細胞の数を増やし、免疫系の活動を強化する作用もあります。また、免疫活動の強化に加えて、ニンニクにはある種の発ガン物質の腸内形成をブロックし、他の発ガン物質によるDNAの損傷を保護する作用もあるらしいのです。ニンニクの多種多様な効果の中には、肝細胞と脳細胞を消耗性の変化から守る作用(恐らく抗酸化化合物の作用だと言われている)、血糖値を下げる作用なども含まれます。
ニンニクの薬効に匂いの成分が負う比率についてはまだ不明であり、無臭製品が同様に効くのかどうかについても判断するのはまだ難しい段階にあります。
《ショウガ》
世界各地で多くの人々が、からだを温め、消化を刺激し、胃のむかつきをおさえ、痛みを緩和する薬としてショウガを珍重しています。まず、ショウガの消化器系に対する効果には、タンパク質の消化を助け、上部消化管の粘膜性内壁を強化して潰瘍の形成を防止し、腸内寄生虫の駆除に多彩な働きをするなどがあげられます。さらに、最近の研究で、からだの治癒反応と免疫反応に介在しているエイコサノイド群という化合物質のアンバランスを矯正して異常な炎症や血小板の凝固を緩和することが分かってきています。また、循環系を整える作用と、一部の発ガン物質がDNAに異変を起こす傾向をブロックする抗ガン作用もあることが分かっています。
《マイタケ》
以前は天然物しかなく、高価で手が出せなかったマイタケも、1983年に新潟県の研究者がブナのおが屑で栽培する方法を発見し、量産に成功したことで、いまではどこのスーパーマーケットでも妥当な値段で手に入るようになりました。サルノコシカケ・シイタケ・エノ キダケなどに代表される食用キノコ類には抗ガン作用があることが、動物実験と臨床試験でわかっています。しかし、試験官の中での実験では無効という結果が出ています。つまり、それは免疫系が損なわれていない生きた動物にだけ効く(免疫系を賦活して)ということを意味しています。マイタケについても、現在、研究中であり既に興味深い結果を得ています。 じつは、「グルカン」というマイタケ・エキスの抗ガン作用と免疫強化作用は、これまでに研究されてきたいかなる薬用キノコのそれよりも強力であることが判明したのです。化学療法と組み合わせて使えば、西洋医学の薬剤の投与量をへらすことができ、しかも、薬物による害作用から免疫系を守る働きがあります。また、マイタケ・エキスには血圧を下げる作用とともに、エイズや肝炎の活動を低下させる作用もあることがわかっています。
《緑茶》
日本の国民飲料である緑茶は最近の研究で、健康に対する数々の利点があることが分かってきました。その利点の中心的役割を果たすカテキンという化合群は、葉を発酵させて作る紅茶になるとほとんど失われてしまいます(ウーロン茶は軽く発酵させてあるので、色も香 味もカテキン含有量も、緑茶と紅茶の中間ぐらいのものになる)。カテキンにはコレステロール値を下げ、脂質の代謝をよくする働きがあります。また、抗ガン作用・抗菌作用もかなりあることが分かっています。すべての茶にはカフェインと同系統のテオフィリンが含まれているので緑茶も大量に摂取すると刺激が強く、コーヒー中毒になるように緑茶中毒にもなりうります。適度に飲んでいるかぎり、健康増進に役立ちます。
現在、コーヒー・紅茶・コーラなどを飲んでいる人は、緑茶や抹茶に変えることを考えてはいかがでしょうか。カフェインの質も悪くないし、さまざまな効果が期待できます。
《ノゲシ》
ノゲシの種子のエキスであるシリマリンには、肝細胞の代謝を促進させ、肝臓を有害物質の損傷から守る働きがあります。アルコールを多量に飲む人は定期的にノゲシを摂取するとよく、化学療法を受けているガン患者をはじめ、肝臓に負担をかける薬剤を使用している人にもお薦めと言われています。
《黄耆(おうぎ)》
中国の伝統医は黄耆を真の強壮剤だと考えています。衰弱した患者に元気を取り戻させ、病気全般に対する抵抗力を高める効果があるからです。現代中国医学では、化学療法や放射線療法を受けているガン患者の免疫機能を回復させるための複合生薬療法である「扶正」療法の主剤として黄耆が使われています。中国の研究では、黄耆を使った生薬療法と現代医学を組み合わせた療法で、ガン患者の生存率が高まり、現代医学の治療による免疫抑制作用を緩和する効果もあることが立証されています。
《エゾウコギ(五加根)》
シベリア朝鮮人参とも言われ、ロシア人の科学者がチョウセンニンジンの代用物を探しているうちに、その驚くべき適応力「抗ストレス的」作用を発見しました。エゾウコギは多くの動物実験と臨床試験で、抵抗力と免疫力の強化に役立つことが証明されています。その主要活性成分は多糖類とエレウテロシデという特徴的な一群の化合物です。現代中国の医師はこれに強い関心を示し、全般的な回復効果が期待できる優れた強壮剤として、さまざまな慢性疾患の療法に使っています。
《朝鮮人参》
中国北部の原産・北米北東部の原産の二種が珍重され、両種ともに回復効果は同じで、中国産のほうが興奮性と性的活力の増強に優れ、北米産は抗ストレス剤として強力とされています。朝鮮人参は中国と韓国では老人の強壮剤として珍重されています。食欲を増進させ、消化を補助し、皮膚と筋肉に潤いを与え、衰えた精力を回復させる効果があるからです。し かし、朝鮮人参にはエストロゲン(女性ホ
ルモン)的な作用があり、ホルモンのバランスを崩している女性、子宮筋腫、乳腺症、乳ガンといったエストロゲン依存性疾患の女性は使うべきではないと考えられています。
《当帰(とうき)》
ニンジン科の大型植物の根である当帰は、東洋医学では増血作用と循環促進作用のある強壮剤として知られています。子宮の活動と女性ホルモンのバランスを整える作用があり、月経障害や更年期障害の女性、活力が衰えている女性によく利用されます。
《冬虫夏草(とうちゅうかそう)》
樹木からではなく、ある種の昆虫の幼虫の背中から生える奇妙なキノコで、中国とチベットの山間部にみられます。体力、精神力、性的活力を増強する超強壮剤としての需要が高く、今では栽培もされるようになりました。中国の医師によれば、冬虫夏草には強壮効果と同時に鎮静効果があり、延命軽身にも効果があるそうです。