食物繊維、飲料水、塩分、減量

食物繊維
 大腸ガンや便秘症の予防には食物繊維が大切だと良く聞きますがどんな食物からどれくらいとれば良いのでしょうか。
 我々が食べる植物性の食品の中で、消化しにくい成分のことを繊維といいます。昔の栄養学では「不消化物」といって、栄養化がないから価値がないと考えられていました。
 繊維はとても複雑な炭水化物でできていて、人間の消化器系では分解できません。ベジタリアンは繊維をたくさんとっていますが、肉とポテトと白パンや白米しか食べない人は繊維をとっていません。繊維をとっていない人が、どうやら慢性病になりやすいということが分かってきました。そこで、今の繊維ブームが起こってきた訳です。
 繊維食を増やせば、ほとんどの人にとっていい影響があるということは事実ですが、それで万病が治るといった話はあまり信用しない方がいいと思います。科学的な裏付けのある話ではありませんから。
 繊維食をたくさん食べる人の方が、食べない人よりも腸の働きがいいことは間違いありません。繊維は腸の内容物のかさを増やして、排便をスムーズにします。繊維の不足は便秘の原因になるのです。食物繊維を増やすには、果物・野菜・精製されていない穀物をたくさん食べることです。
 一口に繊維と言っても、その化学構造と水に溶ける度合いによって以下のように分類されます。

 

☆ 不溶性繊維(水に溶けない)
   セルロース(繊維素)
   リグニン(木質素)
   ヘミセルロース(繊維素より単純な構造で若干水に溶ける)
 これらは排便を促進し、大腸ガンや直腸ガンを含む腸の病気になるリスクを減らすのに役立ちます。セルロースとリグニンは小麦胚芽やさまざまな穀物に含まれています。
 ヘミセルロースは全粒穀物、ナッツ類、種子類、果物、野菜に含まれています。ヘミセルロースをたくさん含んでいる車前子(オオバコの種子)は代表的な緩下剤で、大便のかさを大きく、やわらかくし、排便しやすくする作用があります。
 不溶性の繊維がどんな働きをするのかは、よく分かっていません。繊維が食物の腸内通過時間を短くして、腸の細胞と発ガン物質との接触を少なくすると言う説もあります。
 大腸ガンは繊維の不足から起こる訳ではなく、遺伝的な背景がある訳ですが、ガンになりやすい素因をもった人には、ある程度の不溶性繊維が腸内にあることが腸の保護に役立つということは考えられます。不溶性繊維はまた、過敏性大腸症候群や憩室炎の改善にも役立ちます。

 

☆ 水溶性繊維(水に溶ける)
   ゴム質
   ペクチン
 樹皮や豆科の植物からとるゴム質はさまざまな加工食品の添加物として使われ歯ざわりや舌触りをよくします。カラス麦やゴマにも含まれています。ペクチンは果物・野菜・種子類に含まれ、胆汁酸やコレステロールを固める働きがあり、それらが血中に吸収されるのを防いでくれます。オートブラン(カラス麦のふすま)に人気があるのは、腸内に入ると血中コレステロールを下げるという作用があるからです。

 

 繊維に関しての忠告があるとすれば、完全に精製されていない穀物食品とともに、新鮮な野菜や果物をもっと食べるということです。精製粉(白い小麦粉など)には繊維がほとんどありません。40グラムの繊維を白パンだけからとろうとしたら、何と1日に50切れのパンを食べなくてはならないという計算になります。精製粉の食品を減らして、野菜や果物と全粒穀物をたくさん食べていれば、繊維のことで心配する必要はありません。

 

水を飲もう
 健康にとって、良質の水をたくさん飲むことは、正しい食事に匹敵するほど重要で、良質の水にまさる飲料はありません。暑い日に冷たくて純粋な水で渇いたのどを潤すのは、たとえようもないほどの快楽です。
 からだにそなわった自己治癒システムの主作用のひとつは血液の濾過で、その作業のほとんどは腎臓が行い、発汗のメカニズムが多少の補助をしています。腎臓はいかに高価な人工透析器でも及ばない、実に効率のいいコンパクトな濾過器です。心臓・血液・腎臓のトリオはひとつの機能単位をなして、常にそれ自身を洗浄・浄化し毒性の代謝産物と、何らかのかたちで体内に入ってくる有害産物の分解産物を残らず捨ててくれます。ただし、この浄化システムは余剰物を捨てるに十分な量の水が流れているときにかぎって、効率よく作動することができます。水分の不足は血液浄化という作業にとって最大の脅威で腎臓にかかるストレスでもっともよく見られるのも水分の不足です。
 発熱、感染、下痢、排尿障害、喘息の発作を起こしている人、薬物を摂取している人、高温の環境で激しい運動や仕事をしている人は、十分な水を飲まないと危険で、それ以外の人は、十分な水を飲まなくてもすぐに影響が出るわけではないが、将来さまざまな病気になるリスクを高めることになります。

 

どれくらい飲むのか
 何事も無理をすべきではないが、良質の水をできれば一日にコップ6〜8杯分は取った方がいいようです。しかし、何杯飲んだかを気にせず、とにかく頻繁に飲むことだけを考えましょう。また、暑い日や運動をして汗をかいたとき、体の具合が悪いときは、飲む量を増やしましょう。
 自分が水を十分飲んでいるかどうかを知る方法のひとつは、尿の量と色を観察することです。水をたくさん飲んで排尿の頻度が増えたらそれを面倒に思わず、腎機能がうまく働いている証拠だと思い、また、水をたくさん飲むと尿の色が薄くなるということも覚えておきましょう。色が濃く量も少ない尿は、水の飲み方が足りない証拠です。

 

水以外の飲み物はどうか
 残念ながらほとんどの人が飲んでいる飲料は体に益より害があるものが多いといえるでしょう。まず、アルコールは利尿剤であり、泌尿器を刺激し、体内に水を貯える働きをする下垂体ホルモンを抑制して、水分の排出を促進します。また、カフェイン飲料(コーヒー・紅茶・コーラ)も利尿剤で、やはり泌尿器を刺激します。フルーツジュースは糖分の濃度が高く、大量に飲むべきではなく、牛乳はタンパク質であり、腎臓を助けるどころか腎臓に負担をかけます。食事によってタンパク質をたくさん取っている人なら、なおさらです。

 

水道水は良質か?
 日本は世界的にみても水のきれいな国であるため人々の水の安全性に対する意識はそれほどつよくないようです。文明社会では上水道の衛生設備によって飲料水中の病原菌はほとんど除去されていますが、毒性化学物質による汚染は除去されていません。水道水には給水管から溶け出した毒性金属が入っている可能性大です。ところが浄水場はいまだ消毒を主要業務としていて、化学物質による汚染を無視しています。最も一般的な消毒法である塩素処理法はそれ自体が危険を生む恐れがあります。塩素は非常に毒性の強いガスで、トリハロメタンという毒性副産物を作り出します。トリハロメタンはガンや先天的欠損症(口蓋裂など)の原因として知られています。
 大阪市のように高度浄水処理設備で浄水した水道水(オゾンを利用した浄水法)が全国で供給できる日が早く来てほしいものです。
 高度浄水処理について知りたい方は大阪市水道局のページをご覧ください。
 水道水を飲んだり、料理に使うときは、浄水器を利用するなどして塩素(カルキ)や汚染物質を少しでも除去し、また、温水器の湯は飲用しないようにしましょう。温水は冷水より不純物を溶かし込みやすく、内部が不潔であることが多い温水器に長時間滞留しているためです。
 皆さんの家庭の蛇口に簡単なフィルターでも試しにつけて見てください。半年後にそのフィルターをみれば目に見える不純物だけでもどれだけ上水に混入しているか実感できるはずです。

 

 

塩の害について
 塩は一部の人には非常に有害ですが、大半の人にはさほどの害はありません。塩の害の主犯はナトリウム、とくにナトリウムイオンです。しかしこれは、からだの中でさまざまな機能の調整をしている働き者でもあります。神経インパルスの伝達、心臓の拍動、循環器系の液体成分の調整などには欠かせないものなのですが、その必要量は1日に1グラム、つまり小さじ1/4で十分です。
 肉食動物はえさになる動物の血液や組織からナトリウムを摂取し、草食動物は岩塩や塩泉を求めて遠くまで旅をします。人間の塩好きはおそらく農耕を始めたころからのもので、それ以前ではなさそうです。狩猟生活をしている先住民のなかには、今でも塩を知らない人達もいるからです。
 塩は今世紀の医学に好かれたり嫌われたりなかなか評価が定まりませんでした。現在では悪役にされ、高血圧・脳出血・心臓病・腎臓病・むくみ・頭痛の原因及び憎悪因子として糾弾されています。
 多くの人は程度に差はあれ塩に敏感な体質です。そういう人達が塩をとりすぎると体液の貯留が増えて循環系に影響を与え、心臓や腎臓に余計な負担をかけることになります。特に女性の場合は、頭痛やむくみが起こりやすくなります。うっ血性の心疾患や腎臓病の人は、塩の摂取を制限することによって心臓や腎臓への負担を軽くすることができます。
 ナトリウムの摂取量が非常に多い日本人は脳出血が死亡原因の上位を占めています。しかし、日本人には塩への偏愛から生じる害を、熱いお風呂にたいする偏愛によって防いでいるという一面があります。余分な塩分の一部は尿となって、また汗となって排出されますが、熱いお風呂は発汗にはもってこいの方法なのです。塩分と脳出血の因果関係はだれの目にも明らかなようですが、塩が高血圧・心臓病・腎臓病の原因であるとする根拠は、じつはないのです。そうした病気や症状はほとんどの場合、塩自体が原因ではありません。ナトリウムの摂取を制限しても、それだけで症状が完全に改善されるわけではないのです。
 ナトリウムの総摂取量よりも、ナトリウムとカリウムの比率の方が重要です。からだの中でナトリウムを補う働きをするカリウムは、新鮮で多様な果物や野菜をとっている人なら、十分に摂取していますがそれらをあまり食べない人、利尿剤を飲んでいる人(尿と一緒にカリウムが流れ出てしまう)は不足する心配があります。また、人によってはカルシウムの欠乏がナトリウムの害に弱くなる原因をつくっている場合もあります。どちらにしても塩が有害だと断定するのは早計にすぎますが、塩は控えるに越したことはありません。特に家系的に高血圧・心臓病・脳出血などの素因がある人や塩に敏感な人はなおさらです。

 

 

減量
 食べたいものが食べたいときに食べられる今の世の中。いろいろ試してみるものの減量に苦労し、失敗し、すぐに体重が戻ってしまうと悩んでいる方はたくさんいます。どうしたら減量でき、また、減った体重を維持できるのか?
 その答えは少食以外にありません。言葉でいうと簡単ですが、他の方法で減量を約束するいかなる本、教室、クリニック、商品も、少食にはかないません。
 摂取するカロリーを減らして、運動によって消費エネルギーを増やせば、ほとんどの人は痩せてきます。好きなものを好きなだけ食べながら痩せる奇跡のダイエットは、この世には存在しないのです。
 減量は今や飽食社会に住む人々の強迫観念になり、余分な脂肪が健康によくないと脅されているばかりか、娯楽産業やファッション産業が送ってくる「理想的な体型」のイメージに振り回されている傾向にあります。そのおかげで大部分の人が、拒食症ぎみに痩せた人だけが美しく、セクシーであると思い込んでしまいがちです。
 時代が変わり、文化が変われば、理想的な体型も変わります。ふっくらと丸みを帯びたからだが美しいとされる文化もあるのです。肥満に対するこの国の文化的偏見は医学的思想をも歪めているようです。多少太りぎみ程度では、何も心配する必要はありません。
 脂肪はエネルギーの貯蔵庫ですから、多少脂肪を貯えている人は、慢性病やストレスでエネルギーが大量に使われたときなどは、かえって有利な場合もあるのです。とはいえ、かなり太っている人、だいたい標準体重を20%以上うわまわっている人は、心臓血液疾患(心臓病や高血圧)・糖尿病・胆石・ある種の癌・骨関節炎などになるリスクが高いことは確かです。

 

人はなぜ太るのか
 摂食行動の生理は、脳幹にある食欲中枢に支配されています。その中枢は空腹に対してサーモスタットのような働きをします。中枢のセットポイント(設定値)がどの辺にあるかによって食べる頻度や量が決められるのです。多くの人はその設定がおかしくなっていて、体が必要としないのに余分なカロリーをとってしまうというわけです。これにも遺伝的な理由が考えられます。人類の先祖のうち、たまに食料が入ったときに効率よくカロリーを貯えておく能力があった人たちが生き残ってきたのかも知れません。そんな時代が長く続いたせいか、食欲中枢のセットポイントは、短い飽食の時期と長い飢餓の時期を繰り返す世界、あるいはいつも少ししか食料がないような世界向きに設定されているのです。四季を通じて、朝から晩までありとあらゆるおいしそうな食品が簡単に手に入る今の世界では、その設定値が問題になるわけです。

 

痩せ薬は効くのか?
 脳の食欲中枢の設定値を変える方法は二つしかありません。そのうちの一つは興奮性の薬物をとることです。その方法を利用したのがいわゆる「簡単に痩せられる商品」で、それらの商品にはエフェドリンやフェニルプロパノラミンなどの合成興奮剤か、麻黄・ガラナなどの天然興奮剤が入っていることが多く、興奮剤は食欲を抑え代謝を早めますが、神経過敏・不安・不眠等の原因にもなり薬物依存を生じさせます。しかも服用をやめると体重はすぐに戻ります。 最近流行の「痩せ薬」はクロミウムとガルシニアです。クロミウムのサプリメントは血糖の配分と利用をつかさどる膵臓のホルモンであるインスリン系に影響をおよぼします。細胞が血中からブドウ糖を吸収するとき、インスリンとともにクロミウムが必要だからです。最近の研究では、高単位のクロミウム投与が成人型糖尿病の血糖値を正常化すると報告されています。クロミウムがインスリン作用の阻害要因を改善するようです。しかし、残念ながら、それで減量に成功したという報告はみあたりません。ガルシニアは東南アジア原産の植物の実から作るもので、珍しい酸性成分を含んでいます。その成分が肝臓でブドウ糖の脂肪転化を阻害するようです。今のところ無害なようですが、減量効果に関する信頼できるデータは存在しません。

 

運動をしよう!
 設定値を変えるためのもう一つの方法は、規則的なエアロビック運動(息切れがする持続的な運動)の量を増やすことです。この方法はカロリーを燃やすばかりではなく、一定期間続ければ、脳の食欲調整に影響を与えることができます。分別をもって行えばエアロビック運動の効果はいいことづくめなので、減量を目指す人達にはお薦めです。しかし、基本ルールを忘れて運動だけをしていても効果はありません。基本は少食です。一番濃いカロリー源は脂肪ですから(炭水化物とタンパク質は1gあたり4.5kcal、脂肪は9kcal)ですから、少食のコツは脂肪の摂取を少なくすることにあります。とはいえ、脂肪のかわりに高カロリーの炭水化物や澱粉を摂取していたのでは、事態は変わらないどころか、悪化させる恐れもあります。無脂肪(ファットフリー)、低脂肪(ローファット)の食品が普及するにつれて、糖尿病が確実に増えています。それはなぜか?恐らく、カロリーの総摂取量が増えているからでしょう。「無脂肪」の食品は「無カロリー」ではないことに気が付かず安心して食べ過ぎるとカロリーオーバーになります。常に総摂取カロリーに注意して、高脂肪食の替わりには、野菜のような低カロリー食をとるべきです。
 エアロビック運動の量を増やして脂肪の摂取を減らしていけば、体重は必ず減ってきます。低脂肪食と運動を続けている限り再び太ることは有りません。とはいえ、この方法で急に体重を減らすことには何の益もありません。ゆっくりと時間をかけて減らしていけば、理想体重に達してからそれを維持しやすくなります。
 自分が肥満かどうか知るために、BMI(Body Mass Index)という計算式がよく使われます。
 体重(Kg)を身長(m)の2乗で割ります。例えば身長160cm体重70kgの人なら70÷(1.6×1.6)で27.3となります。
 この数字が20〜24は正常、26.4以上は肥満ということです。