W.利用者が望むケアを受けられるように

〜ケアマネージャーが本来の役割を果たせる〜

@ケアマネージャーの独立を容易にする

施設や他の介護事業所と同じ経営グループにある居宅介護支援事業所のケアマネージャーは、担当する要介護者にそのグループのサービスを使わせるような圧力を経営者側から受ける。
仮に、40人を担当してそれぞれ支給限度額が20万円と仮定すると月に800万円までの介護報酬が支払われる。
年間1億円近くの介護報酬を全額自分のグループに入れたいと経営者は希望する。
一方、ケアプラン作成に対する報酬は一人あたり1万円または1万3千円に過ぎない。
40件担当しても40万〜50万円に過ぎず、社会保険料や車やパソコンとソフトのレンタル料や事務所賃貸料など経費を考えると十分な給与は出ない。
一般的にケアマネに対する求人では25万円という給与を提示していることが多い。
看護師や介護士などを5年以上経験して受験して得られる給与としては低い。
利用者の状態によっては月に何度も訪問し、手続きや記録のための書類作成の手間を考えると月1万円は、行政書士などの報酬に比較してはるかに低い。

利用者の生活を支えようと熱意のあるケアマネージャーは、経営者からの圧力によって、利用者にとって適当でないサービス計画を作らされることに納得出来ないが、自分の生活を考えると独立は出来ない。
1人で事業所を開設できたとしても、利用者の獲得や利用者からの電話連絡を1人で受けなければならない、困難な問題にぶち当たっても相談相手がいない。
事業所の情報を1人で集めなければならないなどストレスは多い。
しかし、他の事業所と関係があることによって利用者確保の面でメリットもある。
訪問や通所系のサービス事業所に属することで、そこのサービスを利用したい者のケアプラン作成を頼まれることや、将来施設に優先的に入所するために入所施設と関連あるケアマネージャーを選ぶこともあるのは事実である。

目的・メリット

施設や事業所に属さない居宅介護支援事業所を立ち上げ運営できる。二つのタイプが考えられる。
A.ケアマネ1人で運営する事業所の集合
B.複数のケアマネで独立した事業所を運営する

Aの場合、事務所の場所を同じくするか別に構えるかは別として、電話番や請求事務、パソコンソフトや制度、サービスなどの情報などを共有する。
介護保険に基づいて保険者から指定を受けるためには法人格が必要なために、設立や報告などの手続きを1人で行う。
介護報酬の請求事務や事業所の会計、税の申告や社会保険など自分で出来なければ税理士や社会保険労務士などに依頼することになる。
同一の事務所でなければ、法的に手伝えない事務もある。
電話番や合同で使うパソコンなどは件数に応じて負担しあうことになる。

Bの場合、社会保険や請求事務、会計などの事務はまとめて行うことになる。
居宅介護支援事業所は独立しているが、経営面と法に違反しないように行うことは求められる。
1人のケアマネが不正をすると事務所自体が指定取り消しを受ける。
面倒な事務は事務所が処理したり中継することで訪問先でより多くの事が出来るようになる。
制度やサービス事業者の情報など互いに出し合って学べ、相談が出来るために不安感がない。病気などで担当ケアマネが訪問できない場合にほかのケアマネが変わって行える。

  • 施設や事業所に属さないため、不必要なサービスの追加や囲い込みをさせられない。
  • 利用者本位のケアプランが作成できる
  • 事務所が中継局となって、電話の取り次ぎ、ケアマネが出先からデータの送受信をすることにより訪問活動に専念できる。

例えば、訪問の記録を音声データとして事務所に送り、音声認識ソフトによりテキスト化して支援記録とする。
事務所に帰らなくても携帯メールで事務所に送ることにより記録やメモを整理することが出来る。
利用者宅でケアプランを作成するときに利用予定のサービス事務所の空きや利用できるサービス、加算などのデータや、地図、写真などの情報を送って利用者と家族に見せて決めることが出来る。

必要な機器・環境

  • 事務所に置くパソコンとソフトプリンター。介護報酬請求のためのインターネット環境。ケアマネが持つ端末…携帯電話、タブレット端末
  • 合同で借りる事務所

問題

  • ケアマネ同士で利用者の取り合いになる可能性はないか
  • 良心的なケアマネだけが集まると限らない。どこの事務所でも使い物にならなかった人がくる可能性がある
  • ケアマネたちが運営に意見を出して話し合いにより決める仕組みと人間関係ができるか
  • 事務所のソフトが以前使い慣れているソフトと違う場合が必ず生じる。

Aケアマネージャー用ソフト

介護保険の仕組みは複雑で説明しにくい。
サービス計画や提供表など文章化されても利用者は理解しにくい。
事業所により加算が違うので介護度に応じた利用できるサービスの回数や量がすぐに答えられない。
場合によっては限度額を超えて自己負担が多額になってしま場合がある。
計画表の作成や訂正、記録や定期的なアセスメント、更新手続きなどケアマネにとっても事務量が多く煩雑。

  • ネットに繋がる情報端末をケアマネが利用者宅に持参しケアプランを作成できる。アセスメントもその場で入力できる。
  • サービス事業所のデータ(加算、場所、提供サービス、空き情報、施設やサービス利用の状況の写真など)を利用者宅で調べられる。
    検索が苦手なケアマネには、事務所職員がデータを調べて送ることによって利用するサービスが選びやすくなる。
  • ケアプランや翌月の提供表など原案が出来ていればその場で訂正、印刷して同意印がもらえるので訪問回数が減る。

目的・メリット

  • ケアマネージャーの事務量を減らすと共に、ミスが少なくなるようにする。
  • 利用者に必要な情報が分かれやすく正しく伝えられる。
  • サービス利用予定が書類だけでは理解しづらい。グラフィックを工夫してみやすいような場面を使う。
  • 記録は音声で事務所に伝え音声認識ソフトでテキスト化する。
    またはメールで送信して支援経過記録に組み込む。
    特に目標に対する成果やサービス利用の評価など必要な項目を画面に表示して記録漏れを防ぐ。
  • 出先で主治医の意見書や前回訪問の記録などを見ることができると事務所に寄る必要性が少なくなり時間を有効に使える。
    出勤の確認も通信ででき、伝達すべきことをメールで送れば連絡ミスを防げる。

必要な機器・環境

  • ケアプランをわかりやすく表示できるソフト。音声認識ソフト。利用者ごとに分類して保存するデータベース。
  • 携帯できるプリンターがあれば、利用者宅で訂正した書類が渡せる。
  • ケアマネ用の端末と事務所のパソコン。

問題

  • ソフトを全部開発しないといけないのか。既存のソフトの組み合わせやアドインではできないか。
  • タブレット端末はデータが保存できないので、その都度事務所に送って保存する。
  • 記録の校正などはケアマネがすることになるが、逆に事務量が増えないか。