T.遠距離介護を支える

遠距離にいる老親に介護が必要になった場合、どうしても帰らなければならない場面が生じる。
1つは実際に帰らないとできないことがあるからである。
次に、介護に家族の参加が求められる場合である。まずは顔を見ながら話すことから始めよう。

@ 本人と家族がテレビ電話のように顔を見ながら会話する

  • 定期的に会話する機械を作れる。毎週日曜や、自動で設定できると毎朝定時も。
  • タブレット端末やノートパソコン(以下情報端末)を使用し家族と本人が会話する。

目的・メリット

  • 本人、家族ともに会話することで精神的に安定する。
  • 家族との会話により、RO(Reality-Oriented)法に近い効果が期待できて、軽度認知症の進行が抑えられる。
    (研究して実証すれば補助金が得られる可能性がある。)
  • 家族は、本人の表情や服装、部屋の様子などを見て心身の変化を発見できる。
  • 会話する時間が限られるために、逆に家族は同じ話の繰り返しでも我慢して聞ける。
  • プロバイダーをはじめとし、関係する企業は新しい顧客を獲得できる。

必要な機材・環境

  • 通信環境…ブロードバンド、IP電話
  • 機器…パソコン、タブレット端末(内蔵でない場合は別途ライブカメラ・マイク)、携帯電話
  • 利用できる機器、通信の環境、本人や家族の能力に対応できる。
  • 本人と家族のインターネット環境が整っていれば、双方ともパソコンを使用する。
  • 本人宅にパソコンが無い場合はタブレット端末またはノートパソコンを職員が持参する。
  • 本人宅に大画面のテレビがあれば情報端末を接続し大画面で見ることが出来る。

電話や周りの人の話だけでは真実のことが見えてこないとき。
親は子供に心配を掛けまいとしてことさら元気なそぶりを見せる。
逆に、自分への関心を引こうといかに大変であるか大げさに言う。
認知症が進行していることを、短時間の電話による会話で見つけることは難しい。
表情や服装、部屋の様子を見ながら会話することで、精神的な異常を早く見つけることができる。
老親は子供の声だけではなく顔を見て話すことで本心を表すことができる。
現にオレオレ詐欺では、声だけだったために高齢者が簡単にだまされている。これに対しては別項目で対応する。

A 家族が介護に参加し易い

認定調査やサービス担当者会議をテレビ会議方式で参加する。

  • 調査の場に情報端末を持参して参加し、質問や返事、本人の動作や言動を確認する。
    調査後間違った返事や特記事項に記入して欲しいことを伝える。
  • サービス担当者会議にテレビ電話方式で参加する。
    サービス内容の確認や事業者からの質問に答え、家族としての希望や本人が伝えられない希望などを伝える。

目的・メリット

  • 家族の立ち会いが必要であるが帰省できない時にも訪問調査や会議ができる。
  • ケアプランの作成や修正をその場で確認できる。
  • 介護事業者との意思疎通ができる。
  • 複数の家族が参加できる。
  • 家族は近くにいても、病気や仕事で参加でないケースにも対応できる。

必要な機材・環境

@と同じ

問題

  • @と同じ
  • 複数の家族がいる場合の意思統一が出来ない。キーパーソンが明確にならない。
  • ケアプランやサービスなどの説明をするためのソフトについては後述。

B医師の説明を一緒に聞く

情報端末により本人の受診に同席する。

目的・メリット

  • 医師からの説明を一緒に聞くことで家族に直接伝わる。
  • 医師は画像などを家族にも見せながら説明できる。
  • 本人が説明できないことを家族が伝える、医師は家族に尋ねられる。
  • ケアマネも本人や家族と一緒に医師の話を聞ける。
  • 医師が許可した場合に、医師の説明を正確に記録するために音声と映像で記録できる。

必要な機材・環境

@と同じ

問題

  • 携帯電話の電波と同じように、ペースメーカーや医療機器に影響を与えないか
  • 医師が端末での参加でも言質をとられたり、診察時間が延びることを嫌がらないか
  • 個人情報が漏れないことの説明を本人や家族、医師が了解できるか

介護保険では、認定調査やサービス担当者会議の時に家族の参加が求められることが多い。
要介護認定訪問調査では、調査員は家族に調査結果の確認をとることになっているが、全部の質問について確認することはない。
要介護度の結果が届いて、予想と違うとあわてても不服申請や変更申請を行うには更に手間が掛かる。
訪問調査の場でどのような質問をされてどのように答えたのか家族はその場で知り、誤りを訂正したいと希望する。
また、訪問調査員としても、認定結果に対して苦情が来る事は避けたいので家族の立会いは望ましい。

サービス担当者会議では、サービスを利用する本人は遠慮して意見を控えることが多く、家族は家族の負担軽減と本人の状態悪化を懸念するあまり過剰なサービスを要求する場合がある。
そして、利用者本人の希望より家族の意見が通りやすい。
家族に世話やお金の負担をかけているという利用者の負い目もあるが、介護保険の仕組みの理解に関しては本人より家族のほうが優れている場合が多いことも影響している。
参加する家族はケアプランに対する意見を求められても計画書だけでは理解しにくい。
原案を見ながら希望によって訂正できる方がよい。
また子供が同居していないケースでは、本人の日頃の様子や希望を聞いたこともなく、その上介護や医療についての知識がない長子やその嫁に立ち会いを求められ形だけの参加に終わることもある。


※バーチャルな面会であるが、実際に会わなくても認知症状の始まりや体調の悪化の兆しに早く気づいて手を打つことで、遠距離介護を長く続けることが出来る。
電話の会話だけで認知症が進行していることに気づかない場合が多く、体調の異常を訴えて受診したときにはガンの末期だったということも実際にある。
服装の変化や、自宅の整頓などで心身の異常に気づくことはできる。
家族がホームヘルパーやデイサービスの職員と顔見せが出来ていれば質問もし易くなる。
病院のソーシャルワーカーが参加できれば、退院の相談や医師からの説明を詳しく伝えることが出来る。
独居生活が難しくなったので本人の希望で施設に入所した場合、施設の職員から話を聞くだけでなく、本人の表情や様子を見ることで適切な介護を受けているか判断が付く。
施設に入所すると家族は次第に面会の回数が減ってくる傾向にあるが、本人とのバーチャルな面会によって逆に面会に行きたいと考える可能性もある。

施設入所ができないから、家族が呼び寄せた場合環境に適応できないために引きこもりになったり認知症が進行することが多い。
介護のために帰省するには時間とお金がかかる。
介護のため早期退職して田舎に帰ることは、今まで都会で暮らしてきた家族が生活環境を変えることになる。認知症のある老親と同居することで介護地獄に陥る可能性もある。