コミュニケーションバリアフリー

	基調講演
	まず、基調講演として、和音理事の小谷朋子から、「失語症会話パートナーとは何か」ということをお話しし、続いて和音の養成講座2期生の泉マヤさんが会話パートナーとしての実践報告をいたしました。

	次に四日市市の会話パートナー養成の主導者であり、今大会実行委員長でもある堀本さんと全国各地の会話パートナー養成に関わっておられる言語聴覚士の先生方から、養成の現状と課題についてお話し頂きました。各発表の後に、その地で活動されている会話パートナーさん達からも実践報告や活動についての感想などを発表して頂きました。
	①三重県四日市市から「友の会による会話パートナーの養成」発表者：よっかいち失語症友の会会長堀本一治さん
	・四日市市身体障害者団体連合会に所属していることで、失語症を障害者問題としてともに考え、社会へ訴える大きな力となっている。・友の会が「自分たちで養成しよう」と決定し、当事者・家族・言語聴覚士が協力し、2年かけて準備し2004年に開講した。・受講者数：38名→登録者24名うち活動者8名・ 05年度・06年度はステップアップ講座とフォローアップ講座を開講・行政（地域生活支援事業）による会話パートナー養成の制度化を実現したい・課題：個人派遣のニーズへの対応、継続的な講座の開設・受講者のフォロー、行政への働きかけ、言語聴覚士の積極的なかかわり
	②千葉県我孫子市から「我孫子市の失語症会話パートナー養成・派遣事業について」発表者：竹中啓介ST（我孫子市障害者福祉センター）
	・養成から派遣まで4段階のステップで行っている。（2004年～）１）失語症会話パートナーの養成事業　→　理念や障害の啓発２）会話技術の向上　→　人的資源の確立３）地域活動　→　ニーズの確立４）派遣事業　→　安定した福祉サービスの確立　　・我孫子市の事業の特徴　　　　１）養成から派遣まで自治体である市が直接実施　　　　２）会話パートナーの派遣による地域での交流を毎週実施　　　　３）新しい交流の場の提供　　　　４）派遣された会話パートナーに市から報償が出る（交通費程度）・課題：個人への支援（外出時の支援や在宅への訪問）、障害者自立支援法のコミュニケーション支援事業の一環として条例や規則の整備、友の会との連携
	③神奈川県横浜市から「失語症会話パートナー養成の現状と課題」発表者：松元瑞枝ST（横浜市失語症会話パートナーを養成する会）
	・横浜市周辺のST有志で発足（2001年3月）・横浜市との協働事業モデル事業として（2005年～2007年）良かった点：応募者の増大、実習先の確保、修了者の会「港」誕生　　　　　　保健師向け講習の依頼悪かった点：横浜市民限定、行政の制度変化の影響が大（拠点である言語訓練教室の廃止）・課題：講座の継続、関連職種向け講習会、「港」の活動のバックアップ
	④愛知県から「失語症会話パートナーの養成およびその活動について」発表者：鈴木朋子ST（愛知県言語聴覚士会コミュニケーション支援局）
	・2002年７月に全国失語症者の集い愛知大会をきっかけに、養成開始名古屋市、江南市、岡崎市で開催・ 2004年6月から養成講座が愛知県言語聴覚士会の活動事業となる・ 2007年7月会話パートナーの会「あなたの声」発足・個人サポートを3名に試行した　⇒　サポートの目標を明確にし、期限を設けることで、成果があった。STが調整役として関わる必用あり・課題：会話パートナー活動の保証、個人へのサポート体制作り、会話パートナーとSTの人材確保
	⑤福岡県福岡市・北九州市から「失語症会話パートナー養成の現状を今後の課題」発表者：柴田亜矢子ST（失語症会話パートナー養成「あんど」）
	・「あんど」は2003年失語症会話パートナー養成と活動支援を目的として発足・現在はST18名、会話パートナー福岡地区15名、北九州地区19名、友の会に密着して活動している・養成講座を2004年より5回実施、医療福祉職対象の講習会も開催・課題：パートナーの意欲・技術の向上、活動の場の拡大、社会的認知の向上
	⑥その他の地域から発表者：田村洋子ST（NPO法人和音）
	・都内板橋区（2002年～）・武蔵野市（2004年～）・世田谷区（2005年～）では勤務するSTが働きかけ、行政が講座を実施・高知県では言語聴覚士の県士会の事業として推進、2005年に会話パートナーを養成するSTを養成するところからスタート、2006年～2008年は医療福祉職対象の講座を実施・静岡県も県士会の事業として、独自のテキストを作るなど2年間の準備を経て今年度スタート、当面は医療・介護職対象の講座を実施予定、軌道に乗ればボランティア養成も・長野県では林耕司STが独自に1989年から会話ボランティア養成講座を開講、毎年20名程度養成、うち1～3,4名が活動継続・札幌市北の会谷川会長から、札幌市身体障害者福祉協議会を通じて失語症会話パートナー制度の創設を申し入れ、他都市の実施状況を参考にしながら検討したいとの返事を得たとのメッセージを頂いた
	まとめ
	どの地域も、当事者の方々の参加を得ながら、それぞれの地域に合った養成方法を工夫されていました。いずれも言語聴覚士が養成を担っていますが、マンパワーの不足は共通しており、訓練室での言語訓練に終始するのではなく、社会参加を支援するという視点を持ったSTを増やす、育てる必要があることが多くの地域から報告されました。発表者の方々が共通して課題と感じておられる事は、以下の三点にまとめられると思います。 ①まず皆さん養成を継続する事が必要だと感じておられて、継続して行く為のマンパワーと資金の確保、受講者のフォローアップが重要だというのが共通認識でした。行政が養成を行っているところもいくつかありますが、まだわずかです。言語聴覚士の県士会が事業として取り組んで下されば、資金、マンパワーとも、ある程度保障されるのではないか、という方向性が一つ見えてきました。そこから効果測定など科学的なデータを出していって行政につなぐ、ということもありえるのではないでしょうか。 ②二つ目は社会的認知ということです。まだまだ失語症自体も知られていないし、その支援者である会話パートナーについては、なおさら知られていないので、もっともっと行政やマスコミに対して発信していく事が必要です。講座を開くこと自体が広報にもなりますので、定期的に講座を開いて、社会的認知に繋げて行きたいということです。全国へ波及させるために今回のシンポジウムが一つのきっかけになれば幸いです。 ③三つ目は個人への支援ということです。愛知では個人支援の試みとして、目標と期間を決めて会話パートナーが訪問することで成果があったことが報告されました。和音も個人宅への会話パートナーが訪問する事業をやっていますが、コーディネートする組織が必要です。また、障害者自立支援法で規定されている地域活動支援の「コミュニケーション支援」を失語症の人にも適用して制度化実現を、というご提案が四日市の堀本会長から出されました。我孫子の竹中先生もその方向で検討しているということでした。これは非常に重要な方向だと思います。ですが、当事者の方々が、コミュニケーション支援が必要だ、という声をあげて頂かないと、行政を動かす事はできません。聴覚障害や視覚障害など他の障害者団体はどんどん権利を主張して、制度的な保障も獲得して行っています。失語症だけが置いてきぼりになっている状況を打開するためにも、会話パートナーの支援を得て、ぜひ声を上げて下さい。以上でご報告とさせて頂きます。

	基調講演
	まず、基調講演として、和音理事の小谷朋子から、「失語症会話パートナーとは何か」ということをお話しし、続いて和音の養成講座2期生の泉マヤさんが会話パートナーとしての実践報告をいたしました。

	次に四日市市の会話パートナー養成の主導者であり、今大会実行委員長でもある堀本さんと全国各地の会話パートナー養成に関わっておられる言語聴覚士の先生方から、養成の現状と課題についてお話し頂きました。各発表の後に、その地で活動されている会話パートナーさん達からも実践報告や活動についての感想などを発表して頂きました。
	①三重県四日市市から「友の会による会話パートナーの養成」発表者：よっかいち失語症友の会会長堀本一治さん
	・四日市市身体障害者団体連合会に所属していることで、失語症を障害者問題としてともに考え、社会へ訴える大きな力となっている。・友の会が「自分たちで養成しよう」と決定し、当事者・家族・言語聴覚士が協力し、2年かけて準備し2004年に開講した。・受講者数：38名→登録者24名うち活動者8名・ 05年度・06年度はステップアップ講座とフォローアップ講座を開講・行政（地域生活支援事業）による会話パートナー養成の制度化を実現したい・課題：個人派遣のニーズへの対応、継続的な講座の開設・受講者のフォロー、行政への働きかけ、言語聴覚士の積極的なかかわり
	②千葉県我孫子市から「我孫子市の失語症会話パートナー養成・派遣事業について」発表者：竹中啓介ST（我孫子市障害者福祉センター）
	・養成から派遣まで4段階のステップで行っている。（2004年～）１）失語症会話パートナーの養成事業　→　理念や障害の啓発２）会話技術の向上　→　人的資源の確立３）地域活動　→　ニーズの確立４）派遣事業　→　安定した福祉サービスの確立　　・我孫子市の事業の特徴　　　　１）養成から派遣まで自治体である市が直接実施　　　　２）会話パートナーの派遣による地域での交流を毎週実施　　　　３）新しい交流の場の提供　　　　４）派遣された会話パートナーに市から報償が出る（交通費程度）・課題：個人への支援（外出時の支援や在宅への訪問）、障害者自立支援法のコミュニケーション支援事業の一環として条例や規則の整備、友の会との連携
	③神奈川県横浜市から「失語症会話パートナー養成の現状と課題」発表者：松元瑞枝ST（横浜市失語症会話パートナーを養成する会）
	・横浜市周辺のST有志で発足（2001年3月）・横浜市との協働事業モデル事業として（2005年～2007年）良かった点：応募者の増大、実習先の確保、修了者の会「港」誕生　　　　　　保健師向け講習の依頼悪かった点：横浜市民限定、行政の制度変化の影響が大（拠点である言語訓練教室の廃止）・課題：講座の継続、関連職種向け講習会、「港」の活動のバックアップ
	④愛知県から「失語症会話パートナーの養成およびその活動について」発表者：鈴木朋子ST（愛知県言語聴覚士会コミュニケーション支援局）
	・2002年７月に全国失語症者の集い愛知大会をきっかけに、養成開始名古屋市、江南市、岡崎市で開催・ 2004年6月から養成講座が愛知県言語聴覚士会の活動事業となる・ 2007年7月会話パートナーの会「あなたの声」発足・個人サポートを3名に試行した　⇒　サポートの目標を明確にし、期限を設けることで、成果があった。STが調整役として関わる必用あり・課題：会話パートナー活動の保証、個人へのサポート体制作り、会話パートナーとSTの人材確保
	⑤福岡県福岡市・北九州市から「失語症会話パートナー養成の現状を今後の課題」発表者：柴田亜矢子ST（失語症会話パートナー養成「あんど」）
	・「あんど」は2003年失語症会話パートナー養成と活動支援を目的として発足・現在はST18名、会話パートナー福岡地区15名、北九州地区19名、友の会に密着して活動している・養成講座を2004年より5回実施、医療福祉職対象の講習会も開催・課題：パートナーの意欲・技術の向上、活動の場の拡大、社会的認知の向上
	⑥その他の地域から発表者：田村洋子ST（NPO法人和音）
	・都内板橋区（2002年～）・武蔵野市（2004年～）・世田谷区（2005年～）では勤務するSTが働きかけ、行政が講座を実施・高知県では言語聴覚士の県士会の事業として推進、2005年に会話パートナーを養成するSTを養成するところからスタート、2006年～2008年は医療福祉職対象の講座を実施・静岡県も県士会の事業として、独自のテキストを作るなど2年間の準備を経て今年度スタート、当面は医療・介護職対象の講座を実施予定、軌道に乗ればボランティア養成も・長野県では林耕司STが独自に1989年から会話ボランティア養成講座を開講、毎年20名程度養成、うち1～3,4名が活動継続・札幌市北の会谷川会長から、札幌市身体障害者福祉協議会を通じて失語症会話パートナー制度の創設を申し入れ、他都市の実施状況を参考にしながら検討したいとの返事を得たとのメッセージを頂いた
	まとめ
	どの地域も、当事者の方々の参加を得ながら、それぞれの地域に合った養成方法を工夫されていました。いずれも言語聴覚士が養成を担っていますが、マンパワーの不足は共通しており、訓練室での言語訓練に終始するのではなく、社会参加を支援するという視点を持ったSTを増やす、育てる必要があることが多くの地域から報告されました。発表者の方々が共通して課題と感じておられる事は、以下の三点にまとめられると思います。 ①まず皆さん養成を継続する事が必要だと感じておられて、継続して行く為のマンパワーと資金の確保、受講者のフォローアップが重要だというのが共通認識でした。行政が養成を行っているところもいくつかありますが、まだわずかです。言語聴覚士の県士会が事業として取り組んで下されば、資金、マンパワーとも、ある程度保障されるのではないか、という方向性が一つ見えてきました。そこから効果測定など科学的なデータを出していって行政につなぐ、ということもありえるのではないでしょうか。 ②二つ目は社会的認知ということです。まだまだ失語症自体も知られていないし、その支援者である会話パートナーについては、なおさら知られていないので、もっともっと行政やマスコミに対して発信していく事が必要です。講座を開くこと自体が広報にもなりますので、定期的に講座を開いて、社会的認知に繋げて行きたいということです。全国へ波及させるために今回のシンポジウムが一つのきっかけになれば幸いです。 ③三つ目は個人への支援ということです。愛知では個人支援の試みとして、目標と期間を決めて会話パートナーが訪問することで成果があったことが報告されました。和音も個人宅への会話パートナーが訪問する事業をやっていますが、コーディネートする組織が必要です。また、障害者自立支援法で規定されている地域活動支援の「コミュニケーション支援」を失語症の人にも適用して制度化実現を、というご提案が四日市の堀本会長から出されました。我孫子の竹中先生もその方向で検討しているということでした。これは非常に重要な方向だと思います。ですが、当事者の方々が、コミュニケーション支援が必要だ、という声をあげて頂かないと、行政を動かす事はできません。聴覚障害や視覚障害など他の障害者団体はどんどん権利を主張して、制度的な保障も獲得して行っています。失語症だけが置いてきぼりになっている状況を打開するためにも、会話パートナーの支援を得て、ぜひ声を上げて下さい。以上でご報告とさせて頂きます。