ここではちょっとトクサツから離れてSAYがアニメで最も好きな悪役のひとり、ダイノガイストについて述べさせていただく。ダイノガイストは「勇者エクスカイザー」(サンライズ1990)において登場した久々にカッコいい悪役であった。そもそも「勇者エクスカイザー」は「獣神ライガー」の後番組で当時、キャラもののアニメに食傷気味であったSAY期待の番組であり、そしてその期待を裏切らない出来栄えであったのだが、その中において番組途中から満を持して登場したダイノガイストは当然ただのボスキャラではなかったのだ。
先ず最初にSAYの中でのカッコいい悪役の定義を認識しておいてもらいたい。
1.強いこと。但し、わけの分からない強さ(不思議な力、超能力等)をそのキャラクターのみが所有している場合は不可。
2.存在感、威圧感を持つこと。スタイルにそれが反映されてればなお良し。
3.デザイン的に優れていること
4.強固な意志を有し、知的であること。
以上だ。ダイノガイストはこれらの諸条件を尽く満たす。映像で観て頂ければ一目瞭然だがとにかく強い。それがビーム砲などの火器類に頼らずとも自らが最前線に出ての格闘戦で強いのだ(もちろん火器の撃ち合いでも強いが)。ゴッドマックス、ウルトラレイカーの顔面を掴み、ビル街に投げ飛ばすシーンなどは特に顕著だ。キングエクスカイザーは言うに及ばず、よりパワーアップしたドラゴンカイザーでさえ手も足も出ない。格闘でだ。伊達に「宇宙最強」の呼び名は背負っていない。グレートエクスカイザーになってやっと互角になるくらいの強さというのはある意味、驚異的だ。「ファイバード」のドライアスもこの流れだが、彼の場合、剣技と飛び道具の使用頻度が高いうえ、線も細いためダイノガイストほど強いイメージが湧かない。そもそもその力もマイナスエネルギーによって左右され結局オーガニックドライアスというわけのわからないものなってるようではダメなのだ。それに「宇宙皇帝」はどう考えても自称だろう(部下が二人しかいないし)。ある意味バドー星人と同じレベルだ。
デザイン的にみても光沢のある黒甲冑に身を包んだ二刀流の武士の姿というのは敵のトップとしてはかなり意表を突いている。しかもそれが人型、重戦闘機、恐竜と三段変形し、どの形態でも形状に破綻をきたしていない秀逸なものだ。どの形態でもそうだが、特に人型の時は黒色の甲冑状と飯塚昭三氏の声が相まって恐るべき存在感を生む。又、そのに加えグレートエクスカイザーを除いた各合体勇者達の約1.5倍という体躯の設定が見事だ。これ以上だと威圧感は出るかもしれないが各合体勇者達と同一フレーム内で格闘を展開することは難しく、何よりスピード感が出ない。逆にロボットという限定された素材で同一サイズ以下だと威圧感のカケラも出ないのは自明の理だ。
次に知的であること。ヒーローのライバルたるもの馬鹿では務まらない。毎回、間の抜けた作戦を展開してるじゃないか!という諸兄もいるだろうが、宇宙人、ETとしての彼らの地球人との間の意識の差を楽しむことがこの「勇者エクスカイザー」という作品の基本コンセプトのひとつであることを忘れてはならない(一番はやっぱり「本当の宝物」でしょう)。彼らガイスターはサンダーガイストは別にして特に馬鹿者の集団ではない。それはダイノガイストにおいても当然言えることで、ガイスター四将中最も頭の切れるプテラガイストよりも作戦指揮においてその能力を如何なく発揮し、カイザーズを度々窮地に落とし入れている。
スタイル、存在感等も関わってくるがカリスマ性も高い。ボスキャラという位置付けもあるが、部下が反抗したことはただの一度も無い。圧倒的な実力だけではそうはならないと思う(基地まで壊滅させられてるのだ)。彼ら宇宙人なりの人間的?な魅力があるのだろう。
極めつけはその最後だ。それは月面でのグレートエクスカイザーとの一騎打ち!このシーンは実は後期OPで曲とともに流れていたシーンで最終回の決戦場面だったとは知らず、思わずぶっとんだ記憶がある。その中身は近年(といっても10年前だが)まれに見るカッコ良さ!二人の戦いでGエクスカイザーのマスクが吹き飛びエクスカイザーの素顔が現れ、同時にダイノガイストの角が叩き斬られる!Gエクスカイザーのサンダーフラッシュとダイノガイストのダークサンダーインフェルノ(技名が対になってるのも良い)の激突!ついに両雄並び立たずダイノガイストは一敗地にまみれるわけだが、その直後逃走し太陽に突っ込み自害して果てるのだ。僕はこれ以上カッコいい決闘シーンは知らない。
「命が宝だと!?ならばこの俺様の命!貴様の手に渡してなるものか!ぬはははははは!!!」
このセリフ自体が番組の趣旨を最も顕著に表現してるものだと言うことは出来ないだろうか?それを言えるくらいの素晴らしいキャラであったと僕は思っている。ダイノガイストは。