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さて、しょうこりもなく夢の話です。
今回の夢は、ロマンス仕立て。
久しぶりに。恋に落ちました(笑)。


私は、いつものデパートに来ていました。以前にも
書いたのですが、私の夢世界、大体の構成は決定して
いるようです。一度なんか、そのデパートでアルバイト
してましたからね(笑)。

と言うわけで、本当に日常的な休日を、私は
過ごしていました。
友人達と待ち合わせて、買い物の前に取りあえず御飯!!
と浮かれていたときです。
私は、万引きをする少年を見かけました。
その少年は痩せていて汚く、目が荒んでいました。
万引きの仕方も恐ろしく大胆で、目に付いたモノを
片っ端から自分の大きな袋に入れていくのです。
あまりにも構わない、その犯罪のやり方に私が目を
奪われていると、少年は見られていることに気が
付いたのか私に目をやり、ふん、と鼻で笑いました。
少しだけ哀しくなって、友人達の催促にも構わずに
彼をじっと見る私。

そのうち、当たり前ですがデパートの店員が来て、
彼に「こちらに来るように」と促したのです。
しかし、彼は頑として行こうとせず、じれた店員が
多少乱暴な口調になったところで、私は我慢ならずに
口を突っ込んでしまいました。
ある程度の商品に付いては代金を払い、その場を
離れます。

どうやら少しだけ、私の財政には余裕があったみたい
です。
その場で、私は少年の服を揃え、妹にも、と言う彼の
言に従って女の子用の服も買いました。
顔を洗って着替えさせ、さっぱりしたところで、お茶を、
と言ったのは、私の方でした。
どうせ、もう友人達は昼食を食べいてるのでしょうから、
取りあえず彼に、私の昼食に付き合って貰おう、と。

彼は、色々と借りがあるから、と私に大人しくついて
きてくれ、トーゼンおごりだよねぇ?と確認してから
すごい勢いであれこれと食べ始めます。
私は楽しくなってしまい、彼にたくさんの質問を
しました。何故、万引きをしていたかの理由なんて
聞く気にはならず、歳とか、妹のこととか、色々と。
そして、彼が私の思っているほど荒んだ生活を
していないことに気が付いたのです。食事方法は
急いでいましたが不快ではなかったし、きちんと
人の目を見て話をする。ありがとうが言えて、礼儀も
男の子っぽく、正しい。


まるで少女のようにワクワクして、私達はとてもいろんな
事を話しました。
まだ12,3歳の子供相手だと思えないほど、彼の話には
教養が満ちていて、一般から高等数学、物理まで
多岐に渡って深い造詣があったようです。
夕方まで喋っていたのですが、寝るところがないのだ、
と言われれて、私は昔からの知り合いのように、彼を家に
案内して泊めようとしました。
そのうち、ふと彼が困ったような顔をするのです。
なに?と聞くと、アンタは誰かに後を付けられるような
覚えがあるか?と逆に問い返されました。
正直に、いいえ、と答えると彼は暗い顔をして、そうか、
と答えます。

唐突に、パン、と言う音が私のすぐ側で鳴りました。
ビックリして棒立ちの隙の私の手を取り、イキナリ彼が
走り出します。
わけもわからず走り回されて、ようやく落ち着いた頃には、
辺りはもう暗くなる時間でした。
ゆっくりと周りを気にしながら、私は、彼を自分の家に
連れていきました。
私は家族と同居していて、頻繁に婚約者が遊びに
来ていました。
どうやら、ブルジョワの家庭だったようです。
急のお客にも構わず、両親は彼を暖かく迎え入れ、
婚約者は彼を一人前の男性として扱っていました。
ゆっくりと、食後の温かいお茶をす飲んでいる途中に。

彼は、自分が亡命者であることを、私に告げました。

自分で言うのもおこがましいけどさ、俺って天才科学者
なんだよね。
だからさ、もっと自由が欲しくて、○○国に亡命すんだ。
けど、祖国が感づいたらしくってさ、今の俺ってばお尋ね
モンに近いんだ。
だから。ゴメンな。俺、アンタを利用した。
亡命に使う船は、明後日に出る。だからソレまで、誰か
オンナと一緒にいたら、少しはカモフラージュになるか
と思って。だから。

だから、と言う言葉を盛んに使いながら、彼は言いづら
そうに目を逸らしつつ私に告げます。
どうしてだか、それを聞いて、私はものすごく哀しくなり
ました。
家族と婚約者が、彼の発言と同時に私を見たことに
なんて気付きもせずに、自分の哀しみと闘っていました。
他人を利用するのは、ある程度なら当たり前のことなの
です。
裏切られる、なんてレベルのモノじゃない。彼は、
自分の権利として当然のことをした。そう思っていても、
本当に、とても哀しくて。

どうしてこんなに哀しいのか混乱しつつ、それでも普通
を装って、私はその場を退出。
眠りに、付きました。


朝起きると、家族と婚約者が既に居間に勢揃いして
いました。
どうしたの?と笑いながら聞くと、
「彼が、もう亡命の船に乗ったよ」、と。
呆然と、私は「嘘??」と聞き返します。何故だか婚約者が
辛そうに、「本当だよ。きっと、彼とはもう二度と会えない
だろうね」と教えてくれました。

彼は、私に嘘を付いたのです。船が出るのは明日、つまり
今日でした。朝一の船に乗り、行ってしまうのだ、と
私の家族にそう告げたそうです。
万が一、私に祖国の追っ手が何か聞くことがあるかも
しれない、その時に、私が安全なようにと、わざと嘘を
教えたのだ、と。


不思議なことに、私はそれを聞くと足元ががらがらと
崩れるようなショックを受けました。
思い出すのは、彼の笑顔だけ。もう二度と会えないの
フレーズがアタマを周り、気が付くと私は、自分の車に
飛び乗っていました。そんな私に、婚約者が船が出る
港と、ソコまでの住所、出航時間を教えてくれます。
どうしてこんなに少年に会いたいのか、まったくもって
わからず、ただ会いたい気持ちで行動する私に向かって、
婚約者は苦笑いし、「いつかこんな日が来るかと思って
いたよ」と意味不明な言葉を残します。
手を振って、もう行け、のサインを確認した私は、家族の
申し訳なさそうな顔を後ろに見つつ、港に向かって出発
しました。


港になんて行ったことがなかったので何度も迷い、結局
私が港に着いたときには出航時間ぎりぎりでした。
私は、たださよならが言いたかっただけなのだ、と自分を
納得させ、船上の彼を捜します。
冷静に考えれば追われている彼がのんびりと甲板に
出てるわけがないのに。
それに気が付いて、私は船に乗り込みます。
さよならが言いたくて。もう一度だけ、彼に会いたくて。
タラップを勢い良く上って、船室への下り階段を見つけました。
ほの暗い船室で、彼はおちつかなげに座っていました。

その彼と目があった瞬間に、私は自分が恋に落ちていた
ことを、ようやく自覚しました。


驚愕する彼に、「め、メールアドレスを教えて欲しくて…」
と告げると、彼は泣き笑いのような顔をしました。
そして、「もう、船は出航したけど?」と意地悪を言うのです。
そんなことないもん、と言うのに、「っつーか、教えないよ?
俺。アンタにだけは」なんてトドメを刺されて。

泣きそうになる私に、彼は今度こそ楽しそうに笑いました。

「俺はね、も、アンタをメール使って話すような距離に
させないよ??」

………え??と言われた意味を少しだけ考える私。
馬鹿だ、コイツ馬鹿だよ!と楽しそうな彼にムッとして
もういいもん、したら帰るし!私!!と振り返った瞬間、
汽笛が鳴りました。
嘘?!と心底焦る私に、彼が少しだけ心苦しそうに
言いました。

イッパツぐらい、アンタの婚約者に殴られてやれば
良かったかも、ね。
と。


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