入力端からの周波数偏差。
下は 1KHz 28.3mV 入力時、即ち全く Attenuate していない特性。
上は 1KHz 2.828V 入力時。入力分圧部の補償により高域で少し持ち上がっている。
入力抵抗・入力容量
50mV・0.5V 入力端子 1MΩ 約 11.5pF
5V・50V 入力端子 1MΩ 約 6.5pF
消費電力 約 2.4W
基板サイズ 140 x 90mm 35μ 1.6t ガラエポ両面。
◎雑誌に理想ダイオード回路を使用した AC-DC変換アダプターが何回か載ったことがあると思います。
それらと特性を比べていただきたい。
技術力のない輩は図々しく雑誌に投稿するべきではありません。
この特性を見たら、自分の製作した機器が恥ずかしくなりませんか。
改造です。今回は 1MHzまでは完全にフラットな周波数特性を目標としています。理想ダイオード回路
を使用した AC-DC変換では究極のものといって良いでしょう。アマチュアレベルでは追従を許さない
最高の性能を持っていると自負しています。
また今回は、当方オリジナルの両波整流回路を使用しており、この回路により位相の問題から完全に
解放されました。
なお当方オリジナルの回路を雑誌やインターネットに発表しようとするときは、
当方の許可を得るとともに出所を明らかにしなければなりません。
回路図
サイン波の実効値を直流電圧として出力しテスター等の直流電圧計で測定するアダプターです。テスター
の ACレンジの周波数特性は、特殊なものを除き、せいぜい 500〜1KHzで商用周波数の電圧測定位しか出来
ません。サイン波の実効値を、測定する周波数帯域でフラットに直流電圧として出力するアダプターが
あれば、テスターを用いて極めて高い精度で周波数特性等の測定をすることが可能となります。本器は
可能な限りフラットな周波数特性を目標に設計し、偏差は出力電圧 2V時 1MHzで 0dBです。
また測定の便利さやレンジ切替ミスによる誤差を少なくするため 5V以上の出力電圧でも誤差の少ない測定を
可能としています。
増幅段
初段増幅部

初段増幅部には "FET入力 OP-Amp の自作" に記述した自作オペアンプを使用しています。FET入力タイプで
20dBの利得を持たせた場合に、1MHzで 5Vをレスポンスの低下なく綺麗に出力できる市販オペアンプは
見つかりませんでした。本器の整流部を使用して測定したため整流部の周波数特性がそのまま出てきています。
2段目増幅部

2段目増幅部は、整流部が入力部にバイポーラ入力オペアンプを使用した当方オリジナルの回路で、
入力抵抗も 2.4KΩと低いため、整流回路との接続は直結でなければなりません。従って出力 DC変動は
0.1mV程度に抑える必要があります。
増幅回路も周波数帯域が低周波のみ、或いは高周波のみというのであれば簡単で良いのですが、
DCから数メガヘルツとなると容易ではありません。またアッテネーターが接続されるため入力抵抗は十分に
大きい必要があります。
初段増幅部と同じ自作オペアンプの方が良いのですが、当初 LF357と LM6361によるユニットアンプ構成で
基板を作製したためスペースがなく、また CANタイプ高周波用 Dual FETの手持ちが残り少ないため、
LM6364の前に FETバッファを置いた簡単な構成としています。整流回路との接続が直結なため
初段よりも厳しい DC特性が要求されます。自作オペアンプもケース内では 0.1mV以下の DC特性を
有しており、簡単な恒温槽でテストもしていますが、実際の使用では短時間のテストでは表出しなかった
問題点が出てくる可能性もあります。従って DC安定度が要求さりる場合にはモールドタイプの 2SK58よりも
CANタイプの Dual FETを使用したい。
特性は 10MHzで -0.575dBとなっていますが、実際の使用は 2〜3MHz程度ですので十分な周波数特性と
いって良いでしょう。FETバッファに使用している 2SK168は当方所持の中で最も入力容量の小さい FETで
実測約 6pFです。
帰還容量 1.5pFとなっていますが実際は 1.5pF+αで、周波数特性が最も良好となるよう調整しています。
10MHzで出力できる綺麗なサイン波の最大出力が 3V弱なので 1KHz 2.828Vで測定しています。
LM6364のように入力バイアス電流の大きいオペアンプでは入力に接続される抵抗値をほぼ同じに
しなければなりません。両入力に接続される抵抗値が大きく異なるとオフセット電圧変動が悪化します。
そのため入力抵抗を大きくしようとすれば帰還抵抗も大きくしなければならず、希望する高域レスポンスを
得るのが難しくなります。
オリジナル両波整流回路
通常の両波整流回路は図のように理想ダイオード回路を通った逆相の半波整流信号と通らない信号が
一定の比率(通常 2:1)で加算されます。このため理想ダイオード回路を通った信号から通らない信号の
逆相分が引き算され、両波整流したと等価な信号を得ることができます。
この回路の欠点として、低い周波数では良いものの、高い周波数では当然のことながら理想ダイオード回路を
通った信号に位相の遅れが生じます。オペアンプに通常良く使われる LF411を使用した場合、位相の遅れは
1MHzで実測約 40°にもなります。この位相の遅れが高い周波数における誤差の原因となります。オペアンプの
使用数を減らすために良く考えられた回路ではあると思いますが、通常のオペアンプを使用する限り性能面の
制約から使いづらく測定器というよりオモチャに近いのてはないでしょうか。オペアンプの使用数を減らす
といっても、本器のような高い精度を求めなければ 2回路入りが1つ百円以下で求められる時代です。
オペアンプが高価だった時代に考えられたものでしょう。
この他にも、位相反転した信号と反転していない信号をそれぞれ整流し、加え合わせて両波整流信号を得る
という方法もあります。しかしながらこの方法では、位相反転した信号は反転していない信号に比べ当然位相が
遅れます。オペアンプの通過数を合わせるために、反転しない信号をボルテージフォロワー或いは非反転増幅
回路を通すことも考えられますが、反転増幅回路と非反転増幅回路の位相の遅れが全く同じかどうか疑問が
残ります。
当方のオリジナル両波整流回路では、±の半波整流信号を積分回路で両波とも直流化しています。
電源の整流回路ではありませんので、半波整流信号を積分するというのは通常考えつかないでしょうね。ホームページを
わざわざ作成するのであればこのような内容でなければなりません。
この後 +出力を極性転換し、両方のマイナス出力を加算して+出力として取り出しています。積分回路まで
全く同じ回路で構成し、更に整流出力をすぐに積分するため両方の信号に位相差は生じませんが、いくら位相差が
あっても全く関係ありません。加算も同じ極性の直流信号ですのでオフセットによる誤差も単純に調整できます。
極めてスッキリしています。直流を極性転換しても位相のずれが起ころうはずがありません。通常の
両波整流回路よりオペアンプが 3ケ余分に必要ですが、高い周波数での位相の問題から完全に解放されることを
考えれば安いものです。位相遅れの問題が完全に解決しましたので残るはダイオード回路のスルーレート
のみとなります。
理想ダイオード回路ではダイオードの順方向分の電圧を極めて短時間で出力する能力がオペアンプに
求められます。この求められる能力は周波数に比例して大きくなり、十分な能力がないと整流された
波形は半波整流波形とは似ても似つかない面積の狭いものとなってしまいます。これがまた高い周波数に
於ける誤差の大きな原因となります。
ダイオード回路
ダイオード回路で周波数特性を良くするためにはオペアンプのスルーレートが重要です。スルーレートは
大きければ大きいほど良い。本器ではスルーレート 300V/μS、利得帯域幅積(Gain Band Wide) 50MHzの
LM6361を使用しています。
整流ダイオード
周波数特性を良くする上で両波整流回路のショットキーバリアダイオードの選択は極めて重要です。
積分回路(直流化回路)のコンデンサを外して出力電圧が 数+mVになるような入力を加え、
オシロを見ながら周波数を上げていくと一目瞭然でショットキーバリアダイオードによる違いがわかります。
数種類ほど試してみた中では 1SS97がベストでした。例えば 1SS108では順方向電圧は低いものの、
低レベルでは低い周波数でも入力信号(検波で言えば搬送波)がそのまま出力に出てきてしまいます。
問題外のダイオードです。かなり高いレベルの信号の処理を目的として設計されたものでしょう。
ゲルマラジオレベル程度の実力しかないアマチュアが訳も分からずに
使用するのは良い結果を生みません。

上図は入力に 1KHzと 1MHzの同じレベルの信号を加えた場合の 1KHzに対する 1MHzの偏差を表したものです。
ショットキーバリアダイオードとゲルマニウムダイオードを比較する上で極めて興味深いデータが得られています。
メーカーにとっても参考になるものでしょう。
1SS97では低レベルの信号でレスポンスが低下します。ゲルマニウムダイオード 1S34(だったと思う)では
低レベルの信号でも比較的直線性は良いものの、信号レベルにかかわらずほぼ一定のレベルの低下が見られます。
1S34を使う場合は周波数特性の補償をしなければなりませんが、0.1dBの誤差を許すとすればかなり広い範囲の
信号レベルで使用可能となります。
なお直流出力 1Vは 2.22Vrmsとなります。
簡単な AC-DC 変換回路
前項の測定結果からも明らかなように、2.828Vrms(1W at 8Ω) 付近の
信号レベルの測定であればオペアンプ 2ケで AC-DC実効値測定が可能です。歪の少ない正負対称波形の信号の
測定に正負両方の整流出力は必要ありません。1MHz程度までは極めて確度の高い測定結果が得られます。
なお信号源インピーダンスは十分に低い必要があります。また直結ですので測定する機器の残留直流レベルも
十分に低い必要がありますが、当方は直流レベルが大きく変動するようなオーディオアンプは問題外として
対象にしておりません。
積分回路
積分回路は直流出力のため良好な交流特性(のオペアンプ)は必要ないようてす。ですが、前述の
整流ダイオードの項目で書いたダイオードのチェックをするのであれば周波数特性の良好なオペアンプが
必要となります。
手持ちがありましたので比較的低オフセット電圧の LF411を使用しています。片側はオフセット調整回路を
付けておりませんが、これは手持ちの中にオフセット電圧 0 の個体が見つかったためです。通常は両方とも
オフセット調整回路を付けねばなりません。LF411であれば何とかダイオードのチェックは可能です。
直流回路
これも手持ちがありましたので、DC特性の良好な低オフセット電圧・低温度ドリフトの高精度オペアンプ
OP-07を使用しています。最終段で実効値を出力するための倍率を合わせています。通常のアマチュアが
使用するのであれば、安価な 2回路入りオペアンプで十分です。トータルとして良好な特性を実現する技術力が
なければ高精度なオペアンプの性能を生かすことはできません。オーディオの分野では、トータルで良好な特性と
する技術力もないのに風評に踊らされて部分的に高価な部品を使用して得意になっているバカが大勢います。
メーカーや販売業者にとっとはこのようなバカは大歓迎でしょう。
ヤフオクにはこのようなバカをターゲットにした業者(?)がうじゃうじゃいます。
整流部周波数偏差

整流部の周波数偏差です。これ程の特性が得られるのはまさに驚きです。当方オリジナルの両波整流回路の
優秀さを示しているといって良いでしょう。1MHzまでは完全にフラットなためプロットしておりません。
最も偏差の大きい5〜6MHzにても -0.1225dBです。
入力分圧部
本器の入力分圧部です。雑誌等の製作記事ではここまで解析していないので、重要な注意点として説明
しておきましょう。主にケースとの間で図のように Csで示される分布容量が存在します。このため
低い周波数では良いのですが、周波数が高くなるとレスポンスや入力インピーダンスの低下を招きます。
僅か 1PFの分布容量でも 1MHzでは入力端子間に 159KΩの抵抗を接続したと等価となります。通常 1PF
ということはなく数PFはあると思われます。またこの Csが R1との間でハイカットフィルタを形成します。
被測定部のインピーダンスが 0 であれば良いのですがそのようなことはありえません。Ccを物理的に
動かすとレスポンスが大きく変動することからも、かなりの大きさの Csが存在することが裏づけられます。
レスポンスや入力インピーダンスの低下を最小限に食い止めるためには Csを小さくしなければなりません。
R2に付加する Ctは主に R1に並列に付加する容量のキャンセル用で Csの影響のキャンセル用ではありません。
分布容量 Csを小さくするためには形状の小さな Ccを用いるとともに、Ccや R1の
Cc側のリードを短くして Ccを入力ターミナルに直付けする等の工夫が必要となります。
本器ては現在小型の積層フィルムを用いています。分布容量の存在は本器に限らず、全ての機器のハイインピーダンス部に
共通する問題です。まあ、ほとんどのアマチュアが製作するようなオモチャでは関係ないことかもしれません
が・・・。面白いもので、分布容量がなどと能書きを垂れる者には実際にやってみろと言うと全く出来ない、
実際に製作する者は余程経験を積んだ者でなければ分布容量などあまり考えもしない。
電気に限らず世の中全てこんな調子です。
分圧抵抗・増幅度の合わせ方
分圧比や増幅度を希望する値に正確に合わせるのは難しい。高価な業務用測定器でも誤差があるからです。
左図は比較的安価に正確に合わせる方法です。オペアンプは FET入力タイプ (Chopper Stabilizeが良い、
0.1mV分解能の電圧計ではオフセット変動は検出されない) を用いオフセット調整をしておきます。
入力に例えば 1.8Vの直流電圧を加え、出力が同じ値になるようにオペアンプの帰還抵抗を調整します。
抵抗は(金属皮膜抵抗 100本入り 1袋が共立エレショップで 200円) 4 1/2 桁のテスターで最下位桁まで
同じ値のものを 10本選別します。例えば 1.8001KΩで選別した場合、その値は 1.80005〜1.80014KΩまであります。
抵抗の値が最悪の組み合わせの場合、即ち 1.80005KΩが 9本と 1.80014KΩが 1本若しくは 1.80014KΩが 9本と
1.80005KΩが 1本でも分圧比は 1/9.99955〜1/10.00045 を得ることができます。従ってオペアンプの増幅度は
9.99955〜10.00045となります。通常そのようなことはあり得ませんので精度は更に一桁は良くなるでしょう。この
抵抗或いはオペアンプを使用して増幅度や分圧比を合わせます。業務用測定器を使用して調整した場合以上の精度を
得ることができます。
不幸にして同じ値が 10本なかったら?・・・2袋位追加購入するか、一桁精度を下げます。精度を求めれば
お金がかかるのは仕方ありません。
まあこれも、ほとんどのアマチュア(おそらく 99.9% 以上)が作るようなオモチャでは関係ないことかも
しれませんが・・・。
その他
ロータリー SWはアルプスの Y-300と Y-205を購入し、バラして組み直し Y-300の 1・3セグメントを 4接点としています。
分圧部の分圧比や各段の増幅度は抵抗の誤差を利用して合わせています。例えば 1kΩの抵抗も誤差±1%で
あれば 990〜1010Ω迄あるわけで、誤差を積極的に利用することにより半固定抵抗を使わずに合わせるこ
とが出来ます。もっともこれをするためには抵抗を袋単位で購入する必要がありますが。
電源トランスに SP-2401を使用しておりますがギリギリです。改造前は電流が少なかったため問題
なかったのですが、改造後は電流が増えた(+側で 47mA)ため 78L15のドロップアウト電圧をかなり割り込んで
しまいました。そのため平滑コンデンサを 220μから 470μに換え、ダイオードもショットキーバリアに
78L15も 7815に換えたのですが、それでも商用電圧が 105Vを下回ると 7815のドロップアウト電圧を
割り込みます。やはりある程度電流を流す場合は 15V x 2でなければなりません。79は 78に比べ
ドロップアウト電圧が小さいため問題ありません。
ダイオード回路の基板パターンは極めて重要です。基板パターン作製が稚拙では当方の特性には
遠く及ばないでしょう。真似して駄目だったら能力が無いのです。スッパリとオモチャ作りから
足を洗いましょう。
参考
増幅部ユニット周波数偏差
当初 LF357と LM6361でユニットアンプを構成し初段と2段目増幅段に使用しようと設計したのですが、
整流部に比べ特性が見劣りするためあきらめました。しかしながら測定データを捨ててしまうのも
もったいないので載せておきます。LF357で 5倍、LM6361で 2倍の増幅度を持たせユニットとして
20dBの利得を得ています。
上は補償前のもので、 5V(at 1KHz) 出力に於いて 1MHzで -0.094dB(2.5V でも同じ)です。
中は 3pFと 22KΩの直列を LF357の帰還抵抗(反転入力側) 750Ωにパラに接続して高域を持ち上げたものです。
青のカーブは出力 2.5V、赤のカーブは出力 5Vです。1MHzまでフラットですが、1.5MHzでは
出力 2.5V時 0.087dB、出力 5V時 0.16dBの低下がみられます。出力 2.5V時と 5V時のレスポンスが
異なるのは LF357の性能の限界を示しています。
下のカーブは LF357単独(Av=10 帰還抵抗 1.8kΩ)の特性です。赤のカーブは出力 5V、青のカーブは
出力 2.5V。
LF357単独で 20dBのゲインを得ていた改造前の本機と同じ特性です。
ダイオード回路
当初ダイオード回路に LM6364を使用していました。
あれ、LM6364はユニテイゲインでは使用できないのではと思う人もいるかもしれませんね。ところが
このような回路では補償無しで使用できるのです。極性が反転する際、ダイオードの順方向電圧の補償に
能力のかなりの部分が使われる(オペアンプからすれば発振している暇はない!)ためと考えますー嘘。
LF357では同じ回路でも補償なしでは発振します。
もっとも反転増幅回路では発振したとしても補償は容易です。
Av=5以上で使用することとなっている LF357や LM6364も、反転増幅回路では RC回路を入力ピン間に
置くことによりユニテイゲインで安定に動作可能です。左図の定数は当方設計ですがユニテイゲインで
安定に動作します。周波数特性にもほとんど影響はありません。